2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年8月25日

 北海道南部地域の福島町で2025年7月12日、新聞配達中の男性がヒグマに襲われて死亡した。その後に駆除されヒグマがDNA鑑定によって「加害個体」であることが特定され、4年前に町内で女性を死亡させた個体と同一だったことも判明した。

クマの出没が連日のように報じられている( Satoru S/gettyimages)

 現在(25年8月2日時点)、道庁による「北海道ヒグマ注意報」が福島町、上ノ国町、平取町の一部地域、砂川市に発出されている。ツキノワグマによる人身事故人数(25年7月末時点の環境省による速報値)は、岩手県12人(死者1人)、長野県13人(死者1人)をはじめ16県で53人におよぶ。8月に入っても連日のようにクマ出没の報道がなされ、人の生活圏への出没が異状現象ではなく、もはや日常となっている。

 この背景として、餌の凶作などが挙げられているが、注目すべきはそもそものクマ類の個体数が増え(、分布も拡大し)ていることだ。対策の基本的な考え方は人の生活圏とクマ類の生息域を区分(ゾーニング)し、すみ分けを図っていくこととされているのだが、維持すべき個体数水準を定めて、個体群管理を実施しているのは都道府県で兵庫県に限られている。

 国は対策として、24年4月にクマ類(四国のツキノワグマ個体群を除く)を「指定管理鳥獣」に指定し、都道府県による計画的な捕獲や生息状況の調査などを国の交付金の対象とした。また、25年4月には鳥獣保護管理法を改正して「緊急銃猟制度」を創設し(9月1日施行)、人の日常生活圏にクマやイノシシが出没した場合、一定の条件を満たした時に、市町村長の判断により銃器を使用した捕獲等ができるようにした。

 生活圏へのクマ出没が日常と化している今、私たちは何をすべきなのか。本論では、クマ類の被害を防ぐうえでの個体群管理の重要性とその課題について論考する。


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