2024年11月22日(金)

患者もつくる 医療の未来

2010年3月20日

 「厚生省保険局としては患者サイドに立ったものの考え方でここの所は考えていくべきだ、という基本スタンスを持ちながら、一方、医師会をはじめとする医療機関サイドの問題もあるわけです。そういった中でどのように医師会などに理解してもらうか、ということに腐心をしてきているというのが実態なんです。私共としても、ご主旨は充分にわかっていますから。これは、私が役所に入った頃からある問題なんです。もう少しだけ時間を下さい」

 その後、レセプト開示を求める被害者運動は広がり、紆余曲折はあったが、97年6月25日に患者から請求があればレセプトを開示するという新しい見解が通知されるに至った。

 しかし、ひとつ大きな課題が残った。レセプトの開示請求があった場合、「医療機関に、疾病名を知ったとしても本人の診療上支障がない旨を確認してから開示する」という手続きを踏むことが求められたのだ。

 これは一般に「告知の問題」と言われる。「患者に本当のことを言わない方が患者のケアになる」という考え方だ。しかし、自分の診療内容を知りたいと開示請求をした人に対して、「あなたは見ない方がいい」と言うことが心のケアになるだろうか。本当のことを教えてもらえず、不安と不満が募るはずだ。「告知の問題で非開示にするのは患者のため」というのはかなり疑わしいといえよう。

 実際、保険者へのレセプト開示請求が拒否されたとして市民団体等に相談が寄せられた事例では、告知が問題になりやすい癌以外の病気で、かつ、開業医が多かった。しかも、結果として、不正請求で処分される事例もあった。

 今回の明細書発行義務化に至る議論でも、薬の名称から病名を調べうるから、患者全員に明細書を発行するのは避けるべきだとの意見があった。しかし調べたい患者には知らせるべきであり、今回初めて、「告知の問題」を乗り越えることができた。「患者から請求があっても開示するかしないかは医師が決める」という時代から、「請求しなくても全員に開示され、不要かどうかは患者が決める」という時代への転換。これが、今回の明細書発行の第一の意義だ。

国民全てを中医協委員に

 次に、患者が医療機関の窓口で自己負担分を支払う際に受け取る領収書についても、歴史を振り返りたい。

 領収書の様式は、1.合計額のみ記載、2.投薬料や処置料、保険内や保険外など小計も記載、3.細かい明細付きの3種類がある(3以外では投薬、検査の内容など、医療費の具体的根拠はわからない)。

 厚生省は81年に、全国の医療機関に対し、2に該当する領収書の発行に努めるよう通知を出している。しかし、同様の通知は、00年にも出された。20年間ほとんど発行が進まなかったということを示している。


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