患者もつくる 医療の未来

2010年3月20日

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 薬害被害者団体の十年越しの訴えもあり、08年改定が決まった直後の国会で、舛添要一厚労相が、模範となるべき国立の病院で明細書の全患者への無料発行を始めると答弁。08年4月から実行に移された。

 そして、今回の改定では、既に国立の病院などで始まった「明細書の全患者への無料発行」を、全ての医療機関に広げるよう、私をはじめとする診療側以外の委員が強く求めた。当初は診療側の一部に反対もあったが、激しい議論の末、委員全員の合意の上で、レセプトを電子請求している医療機関で、全患者への無料発行が義務化されることになった。

情報共有で医療の改革を

 近年医療界は、「医療費の総額や医師の総数が足りないから医療崩壊が起きた。だから増やせ」と言っている。しかし、中身を隠して総額や総数だけを論じてきたことが、内部のさまざまな格差を放置してきた面もあるだろう。

 休日夜間と平日昼間の時間による医療提供体制の格差、都会と過疎地の地域間の格差、開業医と勤務医の労働条件の格差、診療科間や職種間の医師数や収入等の格差、そして、診療内容の質の格差など、医療崩壊の背後にある格差はもはや無視できない。凸凹の形のものを相似形に拡大すれば凸凹の格差がますます大きくなるように、中身を隠して無計画に総額や総数を増やすだけでは医療崩壊はより進んでいくだろう。

 一方で、国民にとって医療はとても大切な社会保障の一つであり、必要十分なお金や人を投資すべき分野である。だが、明細も見せず、そのために内部のきちんとした分析もできていないような会社には、安心して投資できるだろうか。それと同じような不安が国民にあることを医療界は肝に銘じるべきだろう。

 にもかかわらず、明細書発行が決まった後も、「忙しい医師に明細書を発行させると医療が崩壊する」とネット上等で執拗に発言する医師もいる。今まで通りできないことを、すべて「医療崩壊だ」と言って否定するのは、国民を脅して既得権益を守ろうとしているだけではないか。

 明細書の発行は、オセロゲームの角の駒をひっくり返したようなものだ。これをきっかけにして、医療界はさまざまな情報を表に出し、患者・国民と共有して、過去の歪みの是正と未来の地域医療計画や診療報酬体系などのグランドデザインに生かしていくべきだろう。隠すより情報を共有しようとする姿勢の方が信頼感は醸成されるものだ。明細書発行がきっかけとなって、日本の医療がよりよいものに変化していくことを願っている。

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