05年に日本労働組合総連合会(連合)が行ったアンケート調査でも、2の小計記載領収書の発行は病院で90%、診療所で36%に留まった。診療所では1の領収書さえ発行していないところが8%もあった。
私が05年に中医協委員に就任したのは、日本歯科医師会関係者らによる贈収賄事件を発端とする「中医協改革」がきっかけである。
中医協は、医療費の単価である診療報酬を2年に一度改定する。薬や検査や処置の値段、そして、医療機関の機能、人員配置等による加算額等を全て決める機関であり、領収書発行などの規則についても議論する。
中医協改革では、「患者の視点の重視」が強く謳われたが、中医協に関心を示すのは医療関係者や業界団体ばかりである。「初の患者代表委員」と報じられたりもした私の仕事は、国民の全てが中医協委員になれるようにすることだと思った。
「合計」や「小計」の領収書しか発行されず、医療費の単価が患者に示されていない現状では、国民は中医協に関心を持つことさえできない。明細書が全員に発行されれば、国民は中医協が決めている単価が健全なものであるかどうかなどの意見を持つことができるようになる。これが、今回の明細書発行の第二の意義だ。
全患者無料発行にこだわった5年間
私にとって初めての06年改定の際には、明細書発行を求め続けたが、診療側委員らの反対を受け、2の領収書だけが義務化され、明細書については努力義務に留まった。
その2年後、私にとって2回目の08年改定では、「レセプトのオンライン請求をしている医療機関は、患者からの求めがあった場合、明細書の発行を義務付ける」となり、発行手数料の徴収も可能とされた。
しかし、本来あるべき姿は、患者が自己負担分を支払う際に、明細書が全員に無料で発行されることだ。「請求があった場合だけ」とか「発行手数料を徴収する」ということでは、患者は明細書を受け取りにくい。
薬害肝炎事件では、厚労省はウイルスに感染した血液製剤が納入された医療機関名を公表したが、カルテやレセプトの保管期間が過ぎていたために、患者の多くが投与された血液製剤の商品名を知ることができなかった。この問題も、もし、明細書がその都度、患者に渡されていたら防ぐことができていたはずだ。