エコノミスト誌の社説は、ガス・電気料金の高騰に対する正しい対応策を論じたものである。社説が推奨する対応策に従った措置を講じている加盟国があるのか承知しないが、他方、政府が介入してガス・電気の小売価格を凍結するという手法に欠点があることは社説の指摘の通りであろう。しかし、その結果は目に見えて理解し易く、恐らく迅速に実行する上で利点がある手法ではないかと思われる。
EUは結束して危機を脱せるのか
英国が導入するのは小売価格の凍結である。フランスも小売価格の凍結で、その結果価格は安定したらしい。イタリアは付加価値税を削減し、その結果価格は15%下がったという。
9月9日のEU緊急エネルギー相理事会で議論されたエネルギー価格の問題は、上記とは異なり、ロシアのガスの購入価格を一定水準で凍結する問題であった。これを実現出来れば、ガス・電気料金の高騰と、その経済的・社会的インパクトを軽減し得る。プーチンの戦争を賄う資金を絞ることも出来る。
エネルギー相理事会はこの提案を全体として支持したようであるが、価格を凍結する対象をロシアのガスに限定することはロシアが残りのパイプラインも停止する恐れがあるとして反対する加盟国があり、さりとて、すべてのガス輸入を対象とすれば、ノルウェーやアルジェリアなど代替供給源からの輸入を阻害するとして反対する加盟国があり、詳細を決定するには至らなかったようである。
エネルギー相理事会は再生可能エネルギーなど低コストの電力事業者が得ている予想外の利潤に上限を設けること、および予想外の利潤を得ている石油・ガス事業者には「連帯貢献」を求め、これら超過利潤からの徴収分を脆弱な家計と企業の支援に回すことを検討した。この問題については、この社説にも言及があるが、巨大な財政負担が必要とされる状況であるので、エネルギー価格の高騰に伴う超過利潤をもって財政負担の一部軽減を図ることは公平の見地から当然と言えよう。
その他、エネルギー相理事会は、節電目標の設定、電力先物取引に必要な担保金の急増で資金繰りの問題を抱える電力事業者に対する支援措置を検討した。
かつてロシアはEUのガス需要の40%を供給していたが、今や9%に激減した。しかし、EUは少しずつ冬への備えを整えつつある様子であり、結束を維持すれば危機を克服できるとフォン・デア・ライエンEU委員長は語っている。