2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年10月6日

 台湾有事に際してマラッカ海峡が使用できなくなれば、ロンボク、マカッサル海が国際的物流にとって唯一現実的な航路であり、その自由で安全な通過を確保できなければ、インドネシアの国際的責任が問われよう。インドネシアが責任を果たせるだけの能力と意思を持つためには、日米等が協力して、巡視船供与を含むインドネシアの海上保安能力の強化を図ることが重要だろう。

 シンガポールは、現在の米軍艦船の母港の地位を継続せざるを得なくなろうが、紛争発生後はマラッカ海峡周辺の通航が困難になることが予想され、その重要性はそれほど高くなくなるだろう。

日本を頼りにするベトナムの動向は

 最後に、この記事では言及されていないベトナムにも触れておく。ベトナムは、じき人口が1億人を超える東南アジア諸国連合(ASEAN)第3位の人口大国であり、外務省世論調査では一貫して中国より日本を頼りにするという結果が出ている三つの国の一つである(他はインドネシアとフィリピン)。

 一方、ベトナムは、「米国を選べば党がつぶれ、中国を選べば国がつぶれる」とされ、戦略的危機感を持った全方位外交を試みている。その国防方針「四つのNO」は、
①軍事同盟に不参加
②他国との対立に関し第三国と連合しない
③他国への軍事基地不提供、第三国攻撃への自国領域使用不許可
④国際関係で武力行使、武力威嚇をせず
である。これを見る限り、台湾有事に際し米国に自国基地を使わせる可能性は低いと考えられる。他方、中越紛争で中国と刃を交えた歴史に鑑み、実際どうするのか。今後のベトナムへの働きかけは、日米ですり合わせるべき課題の一つだろう。

   
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