2023年1月30日(月)

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2022年10月8日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

選手起用法の妙

 「崩れない」チーム作りの秘訣は、選手体調を重視した起用と、育成にある。この原点は、2019年、20年に経験した2年連続のぶっちぎりの最下位の屈辱。19年、2軍監督だった高津氏は1軍の投手コーチも務めていた。チーム16連敗という屈辱を味わい、59勝82敗2分け、1位とは18ゲーム差、5位とも9ゲーム差だった。

 監督に就任した翌2020年は、新型コロナの影響を受けて試合数が少なく、41勝69敗10分け。首位と25ゲーム差、5位とも13ゲーム差という結果に終わった。投手は崩壊していた。

 「育てるため負けてもいい」と臨めた2軍監督時代と変わり、1軍は「勝利第一主義」を取るのは当然のことだろう。就任時にもそうしたコメントをしていたが、上位チームと比較して、選手層の薄さは歴然で、高津監督はプロ野球に続く旧来の考え方、発想にとらわれてはならないと感じたのだろう。

 そして「育てながら勝つ」。変えられるものから変えるということを重視した。

 いきなりの変革は難しいが、「楽しく野球する」という雰囲気はすぐ変えられる。そしてもう一つ、大型補強なしに、すぐに変えられるものがあった。選手の起用法である。

「ヘルスケアローテ」でパフォーマンス向上

その中心は、けが人をいかに少なくし、勝負所の5、6回を中心に、9回から逆算して投手起用を考える「プルペン管理」にある。

 プロ野球では、通常6人の先発投手を用意し、オフの月曜日を含めて6日間休養する「中6日」で回すのが一般的だが、高津監督の使い方は、先発投手も7人以上を確保し、中7日、中8日、中10日で回し、負担を減らす〝ヘルスケアローテ〟となっている。キャンプ時から、ベストなコンディションを維持するため、プロ野球では例のない「3勤1休」制を敷いた。ちなみにプロでは、4勤1休が一般的だった。

 21年の優勝時には、高卒2年目(当時)の奥川恭伸投手を育てることを最重視し、中10日で起用し続けた。奥川はシーズンを通して活躍し、9勝4敗の好成績を残した。22年度もベテラン石川雅規投手を中15日で使い、21年連続勝利を上げるなど、多様性のある個々の能力を十分に引き出している。

 21年のヤクルト投手陣で、規定投球回数(143回)に達した選手は1人もいなかった。9勝のエースの小川泰弘が128回3分の1で最も多かった。22年も同様の傾向がみられ、規定投球回数を超えたのはエース小川1人の153回3分の1だった。

 先発投手の駒を増やせば、当然、力の差が出て、中継ぎ、抑えのリリーフ陣にしわ寄せがいくが、そのリリーフ陣も3連投を避けるよう管理している。「選手のベストなコンディションを維持して1年働けること」を貫いた。

 こうしたプルペン管理をするには、駒の絶対数が必要で、調子のよい選手を常に観察し、引き上げる体制づくりが欠かせない。1、2軍を一体として、1軍の投手コーチ2人、2軍投手コーチに4人を配して連携を深めたのもそのためだ。


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