2022年12月9日(金)

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2022年10月8日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 プロ野球東京ヤクルトスワローズが、2年連続セントラルリーグ優勝を果たした。「優勝することはすごく難しい。連覇することはもっと難しい」と9月25日の横浜DeNAベイスターズ戦でサヨナラ勝ちした後に語った言葉は、独走、楽勝に見えたチームの裏で、苦しんだ監督の偽らざる本心だろう。2年連続の最下位チームを大きな補強なしに〝再生〟させ、さらに若手だけでなく、チーム全体を大きく成長させた手腕から、学ぶことは非常に多い。

2年連続最下位から連覇を果たしたヤクルトスワローズ。チームを大きく成長させた高津臣吾監督(手前中央)の存在が大きい(時事)

崩れない、輪が乱れないチーム

 「開幕戦の大逆転からスタート、交流戦の優勝、7月に入って新型コロナウイルス蔓延。大変な時期だったが、なかなか崩れない、輪が乱れない、素晴らしいチームで一丸となって戦えた」と語った優勝インタビューは、今年のヤクルトの闘いぶりを端的に物語っている。

 それを雄弁に示すのが、7月9日、チームの主力選手15人が新型コロナに感染し、選手登録を抹消された時だ。最悪のコンディションの中で、ヤクルトは、7月9、10日の阪神戦2試合を延期。2位に10ゲーム差以上引き離す断トツの首位快走中だったが、2試合しか延期しなかったのはチームの総合力、流行りの言葉で言えば 組織に「レジリエンス」(耐性、可塑性)があったからだろう。巨人は、ヤクルトを上回る感染者が出たと言え、オールスター戦をはさみ6試合延期していた。

 「ヤクルトは、1、2軍を含め若手育成がうまくいき、一緒に戦うという意識が広がっていた証拠。選手、コーチの風通しのよさも総合力が高い理由の一つ」と元広島東洋カープのトレーニングコーチで、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員の石橋秀幸氏は指摘する。

 しかし、山田哲人らの離脱は大きく、ヤクルトは、7月13日から5連敗という今シーズン一番の危機に陥った。ここで悪い流れを止めたのが、22歳の主砲村上宗隆だった。

 孤軍奮闘し、チームを引っ張った。山田が欠場した試合は9ゲームに及び、2勝7敗と大きく負け越したが、この9試合の打率は4割を超え、ホームラン4本、打点も10を記録した。

 「自分がチームの中心。けん引しなければならない」という意を強くした村上は、チームを活気づけた。8月初旬の5打席連続本塁打、日本人最多の56号本塁打、史上最年少の三冠王につながったのもこの時の強靭な精神力が後押ししたことは間違いない。高津監督が言う「崩れない」チームの今や大黒柱である。

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