2022年12月2日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月11日

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 10月9日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、「北朝鮮は既に勝利した。米国は非核化の茶番を止めるべきだ」とのクリスチャン・デイビス同紙ソウル特派員による解説記事を掲載し、米国は北朝鮮の非核化が既に不可能なことを認め、リスク削減と軍備管理に集中すべきだと言う専門家の意見を紹介している。

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 米国は、北朝鮮に核兵器の放棄を求めたが失敗したことを認め、リスク削減と軍備管理に集中すべきだと専門家は主張する。10月4日に北朝鮮は日本上空を通過する弾道ミサイルを発射した。米韓は共同訓練で応じ、空母ロナルド・レーガンは朝鮮半島の東側海域に戻った。

 カーネギー財団のパンダは、非核化に固執するのは今や茶番で、北朝鮮は既に勝利した、と言う。金正恩は、北朝鮮の核ドクトリンを修正して先制攻撃を可能とした。「核放棄や非核化を宣言したり相手の要求に応じるために交渉したりすることはあり得ない」と金正恩は宣言した。

 2021年1月、金正恩は、今後5年以内に取得を意図する戦術核、機動型ミサイル、固体燃料型ICBM、原子力潜水艦を含む能力を示した。国連安保理常任理事国間の北朝鮮問題に対する協力はロシアのウクライナ侵攻で崩壊し、北朝鮮への圧力を一層弛め、10月5日、安保理は北朝鮮のミサイル発射を非難することができなかった。

 パンダは、北朝鮮が韓国に使用しうる低出力の戦術核兵器を開発していることを特に懸念すべきだとしている。彼曰く、核戦争は戦術核で開始される可能性が高い。米国が北朝鮮の核兵器保有は継続するという現実を認めるのが遅くなれば、北朝鮮の核兵器能力はさらに向上し、将来、交渉の場で金が得る見返りも高くなるだろう。

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 上記は、ある程度前から存在する議論であるが、最近再度俎上に上ってきている。その理由は、核兵器を放棄した結果、ウクライナがロシアの武力侵攻に晒されるという現実を改めて見せつけられた北朝鮮は、核を放棄しないとの決意を強めたであろうことに加え、この解説記事にもあるように、国連安保理の機能不全が修復不可能な形で一層進んでしまい、それにより、これだけの頻度でミサイル実験を繰り返す北朝鮮を非難することさえできなくなっていることである。これは、北朝鮮が核実験を行っても変わらないだろう。

 同時に、北朝鮮がこの機会を捉えてロシアとの関係強化に動いたことも大きい。今後は孤立を強めるロシアにとって、北朝鮮の重要性が高まるかもしれず、そうなれば、ますますこの問題の解決は難しくなる。もちろん、北朝鮮にとっては、ロシアは武器の技術向上を支援してきてくれた相手でもある。

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