「入院していた同じ部屋には、首しか動かすことができずに電動車イスに乗っている人がいたり、歩けるほどの軽い障害なのに『珠実ちゃんは若いからいいわよ、私なんか年寄だし、ちょっとしか歩けないのよ』といつも愚痴をこぼしている人がいたり、重度の障害なのにものすごく明るくて、大好きなアーティストのライブを見に行くんだ～と言ってリハビリに励んでいる人がいたのですが、私はその明るい人のおかげで自分の障害を重いとは感じませんでした。私は入院中から手も動くし、車の運転もできるようになると言われていました。出来ることがいっぱいあるのに愚痴をこぼしちゃいけないと思ったんです。グズグスしたくなかった」
「私は何かを乗り越えたわけでもなく、ただ人に支えられてここまで来れただけなんです。でも外に出て行くことが大切です。障害のあるなしにかかわらず、上を見ても下を見てもきりがありません。一人で考えていてもいけません。私の場合は、何事もなんとかなると思っていますし、実際になんとかなっています。それは理屈ではなく直感です。なんとかなると思うからこそ、なんとか、なるんじゃないでしょうか。それに私は何でも面白くしたいと思っています」
取材からしばらく時間が経った。テープを聞き直し、原稿を書き終えてみると、やはり“タマちゃん”のイメージは昨年のウィルチェアーラグビー日本選手権大会で見かけた清楚で凛としたイメージそのままであることに気が付いた。
各務 珠実（カガミ タマミ）
1990年 静岡県磐田市に生まれる。
小学生の頃は柔道場に通う傍ら習字とピアノを習う。
中学校は卓球部に所属
神奈川県立秦野曽屋高校時代にウィルチェアーラグビーに出合う。
趣味は書道とドライブ
現在は和光大学に在籍し、神奈川県横浜市を拠点に活動する「横浜義塾」に所属。
唯一の女性プレーヤーとして活躍している。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る（＝isMedia会員登録）
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。
