2024年12月11日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年12月19日

今や中国の国内問題が世界に拡散

 カナダ国家警察が中国設置の海外警察署の捜査を公表して以来、世界各国から同様の機関の存在が報じられたが、12月8日にはドイツ内務省はドイツ国内に少なくとも2カ所の海外警察署が設置されていることを確認したとする。

 CNNは「セーフガード・ディフェンダーズ」の報告書を引用し、中国警察署は海外亡命中国人に対する監視や嫌がらせ、時に本国送還を目的に設置されていると報じる。もちろん中国側は中国警察署の存在を否定し、海外在住の中国人の動向を監視するものではなく、数を増す在外中国人への行政サービス機関だと主張する。

 おそらく今後とも中国は、この主張を繰り返しつつ海外各地に外交上の疑念を招くような〝疑わしき機関〟を設置し続けることだろう。その背景には、国内で強権化一途の習近平政権における海外在住者に対する警戒感が潜んでいることは十分に考えられる。

 だが、その前提として国際社会のグローバル化(中国では全球化)の波に沿うように進んだ「走出去」を起点とする中国人の大量出国があることは否定しようがない。

 「走出去」発言から2、3年後だから胡錦濤政権初期である。旧満洲旅行の際に立ち寄った唐山の朝の街角で会話を交わした若者を思い出す。彼は手に「澳大利亜(オーストラリア)留学」と「加拿大(カナダ)移民」を募集するパンフレットを握りしめ、自らの「走出去」を熱く語ってくれた。その顔が希望に耀いていたことを鮮やかに思い出す。

 その是非の論議は一先ず措くとして、グローバル化が進む現在の世界で、国外政策と国内政策が常に連関し、明確に分かつことなど出来そうにない中国においては、ある政治指導者の事績を振り返る場合、国内状況だけで、それを評価することは現実離れしているし、非生産に過ぎる。またこれだけ錯綜した状況にある国際関係において、二国間関係に基づいた視点からのみ論ずることも、やはり物事の一面にしか目を向けないことにもつながり、誤解を招くばかりか、将来への禍根となるだけだろう。

 やはり江沢民は中国人の海外移動を推奨した中国史上初の、そして国際社会に中国の国内問題を広く拡散させる悪しきキッカケを作った指導者として記憶されるべきではないか。であればこそ、これからの世界に大難題を残してくれたとも言えるのではなかろうか。

 
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