2024年7月25日(木)

21世紀の安全保障論

2022年12月26日

このまま「増税反対」が続けば……

 反撃能力で米国製の巡航ミサイル「トマホーク」を購入し、国産ミサイルの長射程化を目指すのも大事だが、現場の部隊が真に必要としている防衛費をしっかりと積み上げた議論をしなければ、国民は防衛力の強化、そのための防衛費の増額、そして安定的な財源の必要性について理解し、負担を分かち合おうという意識を持つことなどできない。

 事実、3文書が公表された直後の12月17、18日に共同通信社が行った世論調査で、岸田首相が表明した防衛力強化のための増税について、「支持しない」との回答が64.9%に達し、首相の増税をめぐる説明についても、「不十分だ」が87.1%となった。このままでは増税反対の声が、防衛力の強化反対になりかねない危機的な状況だ。

 岸田首相は安定的な財源として、「歳出削減」と「決算剰余金」、「税外収入」などで増額分の4分の3を捻出し、不足する年間1兆円強を「増税」で賄いたいとしている。だがその前に、歳出削減の中身を国民に提示する必要がある。例えば、年間1兆円強が足りないのであれば、消費税に換算すれば0.4%であり、消費税10%の使途をきちんと吟味し、0.4%分が捻出できないのか否かを検証してもいいだろう。

 仮にできないのであれば、国民が等しく痛みを負担するという意味から、消費税を1%増やし、防衛費の不足分に加え、国民保護のために必要なシェルターの建設費用などに充当するという選択肢もあり得るのではないだろうか。消費税1%分の税収は、年2兆~2.5兆円規模であり、検討中の「復興特別所得税」の転用案に比べれば、はるかに納得感があるのではないだろうか。もちろん巨額な社会保障費の中にも無駄はあるはずだ。

 国民が今、岸田首相に求めているのは、納得し、共感できるナラティブであることを忘れてはならない。

 
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