2024年11月22日(金)

プーチンのロシア

2023年1月5日

妥協が許されないゼレンスキー

 戦場ではロシア軍から徐々に占領地域を奪還するウクライナだが、ロシア側は占領地が減った分、防御が必要な前線は減少する。2~3月にかけて気温がさらに下がり、前線の土壌が凍れば防寒着など欧米の装備を持つウクライナ軍に優位との見方もあるが、現在の前進のペースは昨秋と比べ、大幅に落ち込んでいる。

 国民の反ロシア機運がぶれない中、ゼレンスキー氏は国内で戦闘継続へ支持を取り付けることは容易だが、逆に停戦をめぐる提案を行うことは簡単ではない。「クリミアを含む全領土の奪還を目指す」との、ロシア側が受け入れる見込みのない条件を堅持し続けるなか、ウクライナも人員不足が続き、海外支援に頼りながら戦闘を続けるという構図から抜け出すことはできない。

各国の大統領選が影響

 そのような中、戦争の行方に確実に影響を与えるとみられるのが、24年に予定される各国の大統領選だ。

 19年に就任したウクライナのゼレンスキー大統領は24年5月に5年の任期が満了し、同月に選挙が行われる見通しだ。ロシアは24年3月、米国は11月に大統領選が予定されている。

 ゼレンスキー氏をめぐっては、就任当初は政治腐敗を避けるために1期で退任する意向を示していたが、すでに側近からは2期目の続投に期待する声が上がっている。9割近いとされるウクライナ国内での支持率に大きな変化が起きなければ、続投する可能性は高い。

 ただこれも、欧米の支援が先細り、戦況で大幅に劣勢に立たされるなどの事態が起きれば、状況は変わりかねない。ウクライナの大統領選の行方は、欧米諸国の意図が強く影響する可能性がある。

 プーチン氏が独裁体制を維持するロシアをめぐっても、不透明感がぬぐえない。ロシアでは昨秋実施された約30万人規模の動員で社会が大きな混乱に陥ったが、1月中にも再び動員が実施されるとの推測も浮上している。そのような事態になれば、プーチン政権への不満が急激に高まるのは必至だ。ロシアは前線で苦戦を続けており、いずれ新規の動員は避けられないとみられている。

 プーチン大統領が戦況を打開できないのであれば、来年の大統領選に向け、当然プーチン氏以外の候補を模索する動きが出ても不思議ではない。チェチェン共和国のカディロフ首長など、核兵器使用も主張するロシア国内の強硬派が勢いを増す可能性もあり、大統領選に向けてロシア国内が急速に流動化する可能性も否定できない。そのよう事態は、戦況にも重大な影響を与えうる。

 24年秋にはまた、米大統領選も実施される。バイデン大統領が再選を目指すならば、大統領選期間中に戦闘が継続される事態を好ましくないと考えても不思議ではない。大統領選を優位に進めるためにも、今年中にもウクライナ情勢をめぐり新たな方針を打ち出す可能性がある。

 これらの〝変数〟が複雑に作用しながら、23年のウクライナ情勢は推移することになる。

 
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