ロシアによる侵略を受けて今年の経済成長率がマイナス30%を超えると予想されるウクライナ経済が、回復への糸口を見いだせないままでいる。ウクライナ軍との戦闘で劣勢に立つロシア軍が、電力施設など民間の経済インフラへの攻撃に軸足を移し、さらなる損失が確実視されているためだ。
ウクライナ政府はこれまで、最善のシナリオでは2023年には15%超の経済V字回復もあると見通していたが、その実現は厳しさを増している。各国政府や国際機関は巨額の支援を約束するが、ロシアとの戦争の出口が依然見えないなか、国民は長期にわたる厳しい窮乏生活を余儀なくされるのは必至だ。
経済の3分の1を消失
「7カ月以上続くロシアとの戦争は、ウクライナに深刻な人的損失と経済的な痛みをもたらしている。国民の海外流出や、住宅・インフラへの攻撃により、同国の国内総生産(GDP)成長率は今年、マイナス35%に陥ると予想されている」
10月初旬、国際通貨基金(IMF)が表明したウクライナ経済の見通しは、国際社会に厳しい現実を改めて突きつけた。国家経済の実に3分の1が消失する計算だ。
「2023年のウクライナ経済は、マイナス0.4~プラス15.5%の成長を予想している。すべては、軍事的シナリオ次第だ」
ウクライナのスビリデンコ経済相は今夏、欧州メディアにウクライナ経済の復興の見通しをそう語っていた。しかし、「軍事シナリオ」の先行きが依然見えないなか、楽観的な〝V字回復〟は容易には予想できない。