2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月10日

 そのような旧来の対台湾への武器売却の方式を変えて、今回米国が100億ドル相当額の資金供与を行うこととなったのは、画期的変化ということが出来よう。まさに、これは中国からの圧力に抗する台湾を支援するための新たな試みと言える。

中国を抑止できる態勢構築は急務

 中国にとっては、最近の習近平の発言にもあったように、台湾問題は「核心中の核心」の問題であり、「大きなレッドライン(超えてはならない一線)」である。今日、台湾海峡はインド太平洋において米中間の最大のフラッシュポイントであることは言うまでもない。習近平にとっては、台湾問題こそ自らの実績を国民に具体的に見せる上での一大優先課題となったと言っても間違いないだろう。

 昨年8月にペロシ下院議長が訪台した際には、中国解放軍は台湾海峡において大規模軍事演習を行い、発射されたミサイルの内、5発は日本のEEZ(排他的経済水域)内に落下した。

 米海兵隊のバーガー司令官は「米軍にはもっと早く動いてほしい。なぜなら、相手がいつ動くのか分からないからだ」と述べた。中国の対台湾軍事侵攻の可能性については依然として予断を許さないものがあり、米国の軍当局の内部でもその可能性の時期については一致していない。しかし、バーガーがいうように、「兵站などの面で米国軍が、より迅速に行動することを強く望んでいる。台湾への軍事侵攻は、実際は考えていたよりも難しいと中国に思わせるような抑止体制を早急にとらなければならない」という意見は傾聴に値しよう。

 日本内部では、「台湾有事」の際にいかなる対応をとるか、米国のみならず、台湾当局とも種々の議論を重ねつつあるものと推測されるが、「台湾有事」は「日米同盟有事」であるとの観点から、遅きに失することのないような早急な対応が必要とされることは言うまでもないだろう。

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