2024年4月26日(金)

田部康喜のTV読本

2023年1月20日

 ナレーションの悠依の言葉の数々が、胸にしみる。

 「恋愛は錯覚だという人がいる。そんな経験もしてきた。この人だと思っていたのは、絶対に私だけじゃない」

 直木の料理の味から、悠依は、霊としての正木の存在を信じかけた。

 「プリン、しょっぱい。直木はみえないよ。でも、わかる。そばにいてくれる。つまり、あなたは死んだの?」

〝新たな時代〟のドラマの行方は

 第1回(1月13日)のラストシーンで、女性殺人事件があったマンションの入口に設置されていた、防犯カメラをチェックしていた刑事の魚住は、画面のなかに直木(佐藤)が携帯電話で住民を呼ぶようなしぐさをとりながら、マンションの通話装置に手をかけようとしていたのだった。

 直木(佐藤)に自分が死んでいる自覚はない。この映像は、魚住以外の捜査員にも見えるのだろうか。

 Netflix配信のドラマ「First Love 初恋」ばかりではない。大ヒット中のアニメ「すずめの戸締り」もまた、ロードムービーの形式を踏みながら、純愛の物語である。しかも、それは間もなく12年を迎える東日本大震災の記憶と絡む。

 純愛の映像作品は、「定番」とはいいがたい時代を私たちは生きている。大震災後は、新型コロナウイルス、ウクライナ戦争……。

 今回のドラマが、最近の映像作品と同様に哀しみから「希望の物語」になることを待ちたい。

   
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