マンションの女性殺人事件の捜査本部に入った刑事の魚住(松山)は、聞き込みに当たっている最中に直木(佐藤)の姿を見かけた。
「なんだよ。普通にいるじゃん」
魚住と目が合った直木がかけよってくる。「あなたは僕がみえてるんですか?」と。
道行く人々は、まったく直木が見えずに、まるでかげろうのなかを通り過ぎるように直木のからだをすり抜けていく。
「助けてください。僕はいったいどうなっているのでしょうか?」
刑事の魚住(松山)は実は、実家が寺で代々、霊がみえる家系だった。しかし、霊をみたのはこれが初めてだった。
「あなたは死んでいるのではないですか。忙しいのでほかの人に助けてもらってください」と、魚住は去っていく。
魚住のスマートフォンに姉(平岩紙)から連絡が入る。
「なにかあったんじゃない。霊を見たって。怖くて助けなかったって。修行だと思って助けてあげなさい。そうしないと、自分が死んだことが受け入れられなくて、さまようことになるよ」
「だって、いまさら助けようにも、どこにいるかわからないし……」
魚住がふと顔を上げると、そこには直木が立っていた。「助けてください」と。
恋人を守るために、亡くなった男が霊となる「ゴースト ニューヨークの幻」(1990年)の霊媒師を思わせる。
「直木がいる」ことに気づく悠依
魚住はとにかく、悠依(井上)に直木が霊となって、ちかくに寄り添っていることをわからせることに取りかかる。
悠依は、所轄署で一度は魚住にあったとはいえ、いきなり自宅を訪れて「ここに直木さんがいます」と言われて気が動転する。
直木の提案もあって、勤めているレストランに悠依を招いて、直木の料理の味によって悠依に正木の存在を納得させようとする。
魚住は、直木の指導があっても、プロの味の再現は困難だった。そして、直木は魚住に憑依つまり乗り移って料理を仕上げる。
「とにかく食べてほしい」と魚住に憑依した直木がいう。
「あなたはいったい誰?」と悠依。ためらいがちに癖の箸をつかってハンバーグに手をつける。それが、直木の味であることを直感する。
直木の指示で、魚住がテーブルに置いたのは、プリンだった。
「しょっぱい」と悠依。正木が以前に砂糖の代わりに塩を入れた失敗作の再現だった。