2023年12月5日(火)

田部康喜のTV読本

2023年1月20日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 「百万回言えばよかった」(TBS・金曜よる10時)は、井上真央と佐藤健による純愛のなかにサスペンスがひそむ、今期ドラマの傑作の予感がする。

 Netflix配信のドラマ「First Love 初恋」のなかで満島ひかりとコンビを組んで、大ヒットを飛ばした、佐藤健が今回は井上真央とそれぞれが里親に出された先で知り合った、幼馴染が20年ぶりに再会して、恋に落ちる。

(MarinaZg/gettyimages)

 地上波のテレビはいま、ライバル局のみならず、NetflixやHuluなどの有料配信サービスと競っている。今回ドラマの佐藤健の起用はその象徴である。Netflixは、日本、米国、英国、豪州などで「広告つき」の格安プランを始めている。これは、地上波のビジネスモデルである。

 「百万回・・・」の脚本は、安達菜緒子である。看護師見習い役の清原果耶をヒロインにした「透明なゆりかご」によって注目された。朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」もまた彼女の作品である。人間の感情の細やかな揺れを描いたセリフが印象に残る。

再開した恋人と霊が見える刑事

 ドラマは、一人暮らしの若い女性の遺体が発見されるシーンから始まる。現場に到着した刑事の魚住譲(松山ケンイチ)が、キーを握る人物である。

 理容師の相馬悠依(井上真央)は、誕生日の翌日に恋人だった、鳥野直木(佐藤健)が失踪する事態となった。行方不明届を提出にいった所轄署の刑事が、魚住だった。窓口で届け出の条件となる、直木(佐藤)と恋人関係であることを証明するためにスマートフォンの写真を探すのに手間取っていた悠依(井上)をみて、窓口の職員に「受理してあげれば」と声をかけたのだった。

 悠依と直木が20年ぶりに再開したのは、2年前のことだった。彼女が入った洋食店で口にしたハンバーグの味が懐かしかったからだ。料理人の名前の書いた札をみると、「鳥野直木」とあった。

 ふたりは同じ里親のもとで、中学校の同級生ながら兄妹のような関係だった。食卓を囲んで、直木が作ったハンバーグを食べた悠依は、その味にすっかり感心した。

 「才能は生かさなければもったいないよ」と、悠依が直木に告げて、悠依の弁当まで作るようになった。


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