2024年11月22日(金)

教養としての中東情勢

2023年1月24日

 地元メディアなどによると、政権内には最高裁の判断を拒否すべきとの強硬意見もあったが、6割を超える国民がデリ氏の罷免を支持しているという世論の厳しい状況や、「シャス」から今後も政権に留まるとの確約を得たことなどから罷免に踏み切ったと見られている。

 デリ氏も当初は「ネタニヤフ首相と交代で首相を務める」という対案を提示するなど抵抗したが、今後の厚遇を条件に折れたようだ。首相は同氏に議会議長や政権の「アドバイザー」ポストへの就任を約束したとされる。

〝司法改悪〟めぐり国論真っ二つに

 だが、今回の解任劇は政局混乱の序章にすぎない。ネタニヤフ首相は最高裁の判断に対し、「判決の不正義を正していく」として、司法と徹底的に対決していく構えを示しており、「司法制度改革」を強力に推し進める考えだ。これに対し、野党勢力や市民グループ、法律家団体などは〝司法改悪〟だと非難、「首相の狙いは自身の汚職裁判を有利にするためだ」と猛反発している。

 反対派は週末に全土で抗議デモを展開。商業都市テルアビブでは2週続いて10万人を超える人々がデモに参加した。野党の政治指導者も「司法制度の変更はイスラエルの民主主義を崩壊させる」(ラピド前首相)、「分断を助長し内戦になる」(ガンツ元国防相)などと声を上げ、国を真っ二つに割る状況になっている。

 首相の提案する「司法制度改革」とはどんな内容なのか。その最大の目的は最高裁の権限と力を弱体化させることだ。政府の発表によると、裁判所が議会で成立した法律に違憲との判断を下した場合、これまでは議会がそれに従わざるを得なかったが、改革案では、裁判所の判断を議会の過半数の賛成で覆すことができるようになる。

 判事の任命についても政権の権限が大幅に強化される。判事を選出するのは「判事任命委員会」だが、政府は現在、限定的にしか委員を任命できない規定になっている。しかし改革案では、委員会の過半数を政府が任命できるようになるという。汚職裁判を闘う首相にとっては強力な援護射撃になる。


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