2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月3日

 しかし、ロシアのウクライナ侵攻や中国の台頭に目を奪われて中東が視野の外に追いやられているのは米国だけではない。いつの間にか日本のホルムズ海峡依存度(日本のエネルギー源の37%を占める原油の内、中東のホルムズ海峡を通る割合)が過去最高の95%に上昇しているのにも関わらず、日本で中東に対する関心は全くと言って良いほどない。しかし、ペルシャ湾地域からの石油の安定供給が止まれば、日本経済に致命的なダメージを与えるのは間違いない。

武力行使以外のカードがそもそもあるのか?

 ミードの主張は、パレスチナ問題や中東の人権や民主化の問題も含め、まずはこの地域における米国の影響力を回復させることが先決であり、そのためには、イランの覇権主義、とりわけ核武装の危険性を孕むイランの核開発を、武力を使ってでも阻止するということである。

 しかし、「イランが近隣のアラブ諸国を脅かすことを断固として止めさせなければならない」と言うのは易しいが、米国は、既に制裁カードを切ってしまっており、軍事力の行使しか残されていないのではないか。

 イラン核合意(JCPOA)再開交渉は、昨年夏前、米国の中間選挙後まで中断されたが、その後、イラン国内の反政府デモ、イランのロシアへのドローンを供与から、バイデン大統領自身、「JCPOAは、ほとんど死んだ」と発言しているように、とても交渉を再開出来る状況とは思われない。

 イランの核問題の外交的解決が米国の一貫した立場だが、既にイランは、核爆弾製造に必要な濃縮ウランを手に入れている。米国に何か良い手立てはあるのだろうか。ミードは、「オバマ政権の優柔不断さ」と書いているが、同じ民主党政権のバイデン政権も手をこまねいて、ますます事態を悪化させるのであろうか。

 その場合、直接の脅威を受けるイスラエルやアラブ諸国は納得するとは思われない。やはり、「不作為はもっと高くつく」ことになろう。

   
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