2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月20日

Anastasiia_Guseva/Gettyimages

 フィナンシャル・タイムズ紙中東担当編集者のイングランド記者は、12月22日付の同紙解説記事で、最近、2017年以来、初めてのサウジアラビアとイランの外相会談がヨルダンで行われ、サウジとイランの双方が両国間の緊張を緩和しようとしているが、イラン側の対応が遅く、進展が見られていないと書いている。要旨は次の通り。

 12月21日、ヨルダンで開催された国際会議でイランのアブドゥラヒヤン外相は、2017年以来で初めてサウジの外相と会談を行った(協議内容は非公開)。イランは、何カ月間も続く反政府デモを鎮圧する一方で宿敵サウジとの緊張を緩和しようとしている。

 イランとサウジとの緊張は、イランがサウジや他の外国が反政府デモを支援していると非難したため、過去数カ月間高まっていた。11月、西側筋は、イランによるサウジ攻撃が差し迫っているとしたが、その後、米大統領府中東問題調整官は、治安面でのサウジと米国の緊密な協力によりイランによるサウジ攻撃はないだろうと述べている。

 イランでは、若い女性がヒジャブの被り方が悪いとして拘束され死亡して以来、全土にイスラム革命体制打倒のデモが広まっているが、デモが始まる前にイランとサウジは、緊張緩和のために昨年の4月を最後に少なくとも5回協議を行っている。イランのアブドゥラヒヤン外相は、サウジの外相が「サウジはイランと協議を続ける用意がある」と保証したと、SNSへの投稿で書いている。

 サウジとイランは、2016年にサウジがシーア派高位の聖職者を処刑したのに対してテヘランのサウジ大使館が暴徒に略奪されて以来、外交関係を断絶している。両国の敵対関係は、サウジがトランプ前米大統領のイランに対する「最大限の圧力」政策を支持したことでさらに高まった。

 この両国の緊張を緩和するために、2021年にはイラクが両国政府関係者の秘密協議をアレンジしている。サウジは、7年間続いているイエメン内戦を終わらせるべくイランがホーシー派に影響力を行使しないことに不満であり、関係者によれば協議の進展は非常に遅い。

 サウジは2015年にアラブ有志国連合を率いてイエメンの内戦に軍事介入し、反政府勢力の親イラン武装勢力フーシ派と戦っているが、イランはフーシ派に対してミサイルやドローンを供給している。しかし、イラン側は、フーシ派に対して政治的な支持はしているが、武器の供給はしていないと否定している。

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 上記の記事は、サウジとイランの双方が両国間の緊張緩和を求めて協議を続けているとしているが、イラン側から見て、サウジ側が頭を下げてイランとの関係改善を求めて来るなら受け入れるであろうが、気位の高いサウジがイランに頭を下げるとは思えない。


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