2024年4月20日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年2月5日

日本はインドネシアから何を学ぶべきか

ウブド郊外の公立博物館。『チップ不要、汚職撲滅』と宣言している。ガイドと称してチップをねだる博物館の職員に対する警告らしい。しかしインドネシアでは政治家・役人の汚職体質はなかなか変わらない模様

 日本はインドネシアに対して石油、石炭、LNGなどの資源供給国として重視する一方で政府開発援助(ODA)を通じたインフラ輸出先という経済的なパートナーとして位置付けている。果たしてそれだけなのだろうか?

 アキノ大統領時代にフィリピンから米軍が引き揚げスービック海軍基地やクラーク空軍基地が返還された。この頃から中国の海洋侵略が露骨になり歴史的にフィリピンが領有していた岩礁に突如として中国漁船の大群が押し寄せ埋め立てを開始。あれよあれよという間に滑走路が建設された。フィリピンから米軍が引き揚げても米比相互防衛条約は維持されていたにも関わらず中国の怒涛の海上基地建設は止められなかった。

 米軍は当然ながら当初から駆逐艦を派遣するなどして監視態勢を敷いていた。しかし米比相互防衛条約や国際法上、中国とフィリピンの間で軍事衝突が起こらないと米軍は中国艦船に対して実力行使ができなかったのである。最大の貿易相手国である中国との関係を配慮してフィリピン政府は強硬策を取らなかった。

 こうした隣国フィリピンの経緯を間近で見ていたインドネシアはジョコ大統領の指揮の下で違法中国船強制拿捕爆破という実力行使を行ったのである。これはナツナ諸島領有を巡る紛争に関しても中国に対して明確な警告となった。

 その一方で中国の一帯一路政策に対してジョコ大統領は就任早々にアジアインフラ銀行への参加を表明して戦略的包括パートナーシップの下で多数の大型プロジェクトに着手したのである。

 日本は米国の大統領や関係大臣が「尖閣列島は日米安保条約の対象範囲に入る」と明言することで安堵しているが浅慮の極みである。フィリピンの事例でも明白なように日本と中国が軍事衝突して戦争状態に入らない限り米軍は動かないし動けないことを前提にして国防を考えるべきではないか。

 そもそも日本が中国に対して本気で戦う国民的覚悟と物理的反撃能力なくして米軍も国際社会も助けてくれないという冷徹な哲理をロシアのウクライナ侵攻で日本国民は学んだのではないか。

   
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