2024年4月26日(金)

古希バックパッカー海外放浪記

2023年2月5日

インドネシアの若手エリート官僚の説く非同盟中立政策

 大学で国際関係論を専攻したインドネシア政府のエリート官僚S氏によると1955年当時の非同盟主義は米国・ソ連のいずれのブロックにも属さないという枠組みであった。現在でも非同盟主義を維持しており米国・中国・ロシアのいずれの同盟にも属さずかつ等距離中立の立場を維持するという政策という。

タヒチのゴーギャンは有名であるが、バリ島にも19世紀から現在に至るまで多数の西洋の画家が住んで創作しており、バリ島の伝統絵画も欧米の影響を受けている

 中国はインドネシアを一帯一路構想の最重要地域と位置付けてインドネシアの取り込みに躍起となってきた。2014年習近平主席・ジョコ大統領は包括的戦略パートナーシップを締結。石炭火力発電所、ガス火力発電所、鉱石精錬所プロジェクトなどに多数の中国国営企業が投資している。その目玉プロジェクトがジャカルタ~バンドン高速鉄道である。S氏はジョコ大統領が中国による巨額の投資によりインフラ整備で実績を上げていることを評価していた。他方でスマトラ出身30歳の会社員の青年のようにジョコ大統領が余りにも中国に傾斜してインフラや産業振興に傾注していると批判するインドネシア人も少なくない。さらにジョコ大統領は隠れ共産主義者だと酷評するジャカルタ出身の女性建築業経営者もいた。

アジアの巨人中国との付き合い方

ウブドの目抜き通りの『法輪功』の看板。法輪大法好(法輪の教えは素晴らしい)真善忍(法輪功の教えを表したキャッチフレーズ)。そして『サトリのお店』とある。バリ島全体で約5000人が法輪功を修練しているとのこと。パンフレットによると法輪功の現在の目標は共産党支配から中国を解放することらしい

 S氏によるとジョコ政権は貿易の最大取引相手国でもある中国とは案件ごとに是々非々で対応することで非同盟中立主義を実践しているという。2013年の就任直後から海洋国家政策を掲げて外国の違法操業漁船取締りを指示。即決果断な女性大臣を任命して13年当時野放し状態だった違法中国漁船を拿捕、爆破するなどして対中関係は緊張した。その後様子を見ながら穏健的人物に大臣を交替したという。

 この一連の違法操業中国漁船への強硬策の経緯を聞いて改めて2010年の尖閣列島違法操業中国船船長釈放という苦々しい事件を思い起こした。当時の民主党政権菅直人首相が中国側に配慮して船長を釈放させた事件である。菅直人首相は一貫して「沖縄の現地の検察の判断により処分保留で釈放になった」として関わりを否認していたが、当時の民主党政権幹部から菅直人首相が直々に即時釈放を命じたことが明かされている。

 当該中国船は逃走を図り海上保安庁の巡視艇に体当たりまでしている。後日その生々しい証拠のビデオがマスコミに流出した。民主党政権は政権批判につながる都合の悪いビデオを流出させた犯人探しをして海上保安庁の職員を退職にまで追い込んでいる。いずれにせよ、こうした日本側の“穏便な配慮”が重なり中国を増長させたのである。

 S氏によると中国とはナツナ諸島の領有権で争っておりジョコ大統領は違法漁船対策および領海警備活動のため当時の安倍首相に日本の海上保安庁の支援を要請した。さらに中国の軍事的圧力増大に対抗するために米国との軍事協力を強化して2022年夏には大規模な共同軍事演習を実施したという。当時のニュースを検索すると日豪英仏も参加している。


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