この点、1月21日付WP社説「ドイツが戦車のウクライナ供与を拒んでいる。バイデンはそのままにしておくことはできない」の判断は評価できる。この社説は、ドイツが米国による戦車「エイブラムズ」戦車の供与を条件にしていることに言及した後、「エイブラムズの供与が目下の膠着打開の鍵だというのであれば、バイデンはそれを承認すべきだ」と述べた。
実際その後1月25日、バイデンは米国の立場を変更し、エイブラムズ(31両)の供与を発表し、これを受けショルツ独首相が戦車「レオパルト2」の供与と他の欧州国によるレオパルト2供与の承認を発表した。今回の決定は、将来を顧みた時、大きな分岐点だったと評されるだろう。ここで米独双方が解決を図ったことは重要である。
戦後の抑止力構築も視野に
米国は何故エイブラムズを供与することにしたのか。西側結束の維持という大目的があったことは自明だが、もう一つ、米国にはエイブラムズの供与は戦後のウクライナの軍事力、抑止力構築に資するとの深慮遠謀があったのだろう。それは、米政府の思考が既に戦後のウクライナの抑止力構築に向かっているとのイグネイシャスの指摘と平仄が合う。
さらに、米国のエイブラムズは米国の備蓄から供与するのではなく、メーカーから新たに購入した上でウクライナに供与し、実際の納入は大分先になるとも言われており、米国の計画は短期よりも中期的な戦略に基づくように見える。
3月頃とされるロシアの攻勢の前に、迅速な戦車供与が重要である。第一弾は120~140両という。必要な訓練がドイツなどで開始される。訓練は、単に戦車の「運転」だけでなく、「作戦・戦術」の仕方も含まれる。
日本は、ウクライナ問題を欧州問題と捉え、アジアと切り離して考えがちであるが、これが一定の戦後国際秩序の構築に影響を与えることに鑑みれば、日本も積極的に関与して行く姿勢が大事であろう。今年は主要7カ国(G7)議長国であり、国連安保理非常任理事国にもなった。岸田総理のキーウ訪問も検討されており、それなりの役割が期待されよう。