2024年12月2日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月15日

ウクライナへの供与が決まった米国の戦車「エイブラムス」(DVIDS)

 1月24日付の米ワシントン・ポスト紙(WP)で、同紙コラムニストのデイヴィッド・イグネイシャスが、バイデン政権はウクライナ戦争後の軍事バランスをいかに構築し、ウクライナが将来のロシアによる侵略を抑止することをいかに支援するかにつき検討を始めていると述べている。

 ブリンケン米国務長官は、1月23日、ウクライナ戦争の終結と戦後の抑止力についての戦略を明らかにした。彼は、ウクライナが将来の侵略を抑止し、必要とあれば自国を防衛することが出来るようにいかに正当かつ永続的な平和を築くことができるかについて検討を本格的に始めるべきだと考えている。

 ブリンケンの抑止の枠組みは、昨年ウクライナと協議した北大西洋条約機構(NATO)条約第5条と同様の安全保障体制とはやや違ったものになっている。米政府関係者は、そのような正式の条約上の約束というよりも、ウクライナが自衛のために必要とする道具をウクライナに与えることが鍵になるとの考えを強めている。ウクライナの安全は、武器の力や強い経済、欧州連合(EU) への加盟が相まって確保される。

 米国防省は目下、武器の供与と機動戦訓練に重視している。「機動戦武器は、単にウクライナの領土の奪回だけでなく、将来のロシアの攻撃に対する抑止にもなる」と国務省は説明する。

 ウクライナ支援連合の結束は、戦争が終結に向けて動くにつれて一層重要になる。今年も戦いは続くだろう。しかし第二次大戦の最後の数年に起きたように、戦後秩序の計画と、ロシアが破壊した平和を回復し、維持するための軍事的、政治的同盟体制の構築は既に始まっている。

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 イグネイシャスは、米国務省、米国防省、米国家安全保障会議(NSC)は、ウクライナが将来の侵略を抑止し、必要とあれば自国を防衛することが出来るようにウクライナを支援していくことなど、ウクライナ戦争後の秩序につき本格的な検討を始めていると述べる。

 さらにブリンケンの考えは、NATO条約第5条とは違ったもので、今や「米国の政府関係者は、そのような正式の条約上の約束というよりも、ウクライナが自衛のために必要とする道具を与えることが鍵になるとの考えを強めている」という。

 この記事によれば、今や米国はウクライナをハリネズミのような国にしていくことを描いていると理解できる。ウクライナ戦争の終結については、停戦・撤退・ウクライナの安全保障を保証する国際体制の合意が理想であるが、今の状況を見るとそのような解決は難しい。

 今最も現実的なシナリオは、ハリネズミ国家――すなわち、ウクライナは当分の間ロシアと闘いを続け、ロシアの侵略を最大限に阻止する力を保有する、そのために西側支援を通じて戦車や防空戦力など軍事力を整え、強い、汚職のない経済をつくり、他方でEUに加盟するというハリネズミ・経済強化・EU加盟国家モデルを追求することかもしれない。


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