地方議員なり手不足の真の理由は
地方議員の場合は国会議員と違って生活できる報酬でない場合も多い。小規模な自治体では特にそういう傾向があり、ほかに本業を持つことが多い。オンライン審議を増やすと本業との両立がしやすくなることは事実だ。
しかし地方議員のなり手が不足しているからオンライン審議を促進して負担を軽減すべきだという意見には賛成できない。小規模な自治体で議員報酬も少ない場合は、平日夜間や土日に審議するなどして本業との両立を容易にするなどの工夫も合わせて実施しないと、オンライン化だけで効果を発揮するとは考えられない。
地方議員のなり手が不足している理由はいろいろある。最大の理由は、その活動が見えにくいことだ。
夜遅くまで「会派間の調整」に時間を費やして結論を出すのに手間取ったりする例が時々あるが、そのプロセスが公開されないから一般の人たちには議員活動のイメージが描きにくい。議員が魅力ある仕事に見えない。議員は人々の役に立つ仕事なのだが現状ではそのように見えていない。
そもそも国会議員も地方議員も不祥事を起こす人が多すぎる。政治資金をごまかしたり差別発言をしたりする議員が後を絶たない。さすがに近年は議員だからといって威張るような人は当選しにくくなってきたが、そういう人が跋扈(ばっこ)しているのを見るとそういう議員の社会とは距離をおきたくなるのが普通だろう。
近年は過疎化対策として移住を歓迎する政策を促進している自治体も多い。政策として移住を歓迎しても地域の人たちが閉鎖的で拒否的だとうまくいかないし、議員のなり手も多様化しない。オンライン審議は促進したほうがいいが、決め手にはならない。
議員の日常活動をもっともっとオープンにして、尊敬できる人たちで構成される、やりがいのある、魅力的な世界であることを示さない限り、議員のなり手不足は解消されない。
自治体の現場では行政サービスのオンライン化が進展しても、対面による意思疎通が必要な場合が多い。オンライン化はどんどん進めるべきだが、訪問支援や対面説明はなくならないという厳しい現実がある。世の中のコミュニケーション手段のなかでオンラインが主流になることは当面考えられないことを前提にこの問題を議論すべきである。
議員と公務員の違い
公務員は公平な競争試験で入ってきて、違法な行為をしたり不適格だったりする場合などを除いて解雇されない。知事・市区町村長や議員は4年ごとに選挙がある政治家だから、その言動はどうしても有権者を強く意識したものとなる。議員と公務員の価値観とは違うことも多い。
公務員は知事・市区町村長の指揮下にあるが、ただのイエスマンになったら役に立たない。公務員も意見を言うし進言もする。
意見は言うが、公務員は、知事・市区町村長や議員は世論を代表すると思っているから、結局は政治に従う。民意を反映するのは政治家である。
都道府県や区市町村の幹部は原則として、議会における知事・市区町村長を支持する会派と支持しない会派の区別をしない。どの会派とも議論する。議会制民主主義を尊重する。
民主主義の基本は、権力の分立と公開の討論だ。そのために議会を設置する。議会が機能しないと、民主主義も危機に瀕すると考えている。