2024年4月29日(月)

都市vs地方 

2023年2月13日

 日本の自治体議会は、憲法によって知事・市区町村長と議員が住民によってそれぞれ直接選挙される。国と違って議員内閣制ではないのだから、与党とか野党という表現には大いに問題がある。自治体議会には知事・市区町村長に対する対抗勢力としての役割も求められている。

 議員が民意を尊重するのは当然だ。しかし、世論に従うだけなら議員は不要だ。それだったら世論調査だけで政策を決定すればよい。議員は世論を尊重しつつ、将来世代や少数の弱者の幸福にも配慮し、時には辛い政策選択についてもそれが必要な場合は理由を明示して根気強く世論を啓蒙していかなければならない。自ら調べ、政策提案、政策提言に努力する議員も少なくない。

 議会には首相や知事・市区町村長の独走を止める役割も期待されている。個々の議員活動だけでなく、議会としての集団活動にも大いに意義がある。だから議会活動のすべてをオンラインで行うことにはならないだろう。

議員と公務員のやりとりこそオンライン化すべき

 公務員の職場が近年は必ずしも魅力的でなくなった理由の一つに、議員の質問を事前に把握したりその調整に深夜まで勤務するというイメージが定着したことがある。コロナ禍のなかでこれがかなりオンライン化されたという話も聞く。

 災害や緊急事態のために深夜まで働くのは公務員だろうが民間の職場だろうが必ずしもいとわないだろう。しかし議員との質問答弁の調整のために深夜勤務というのはいかにも理不尽だ。これらこそすべてオンライン化とすべきではないか。

海外に滞在し続けている国会議員に真っ当な仕事ができるのだろうか(時事)

 議会審議における質問答弁の調整作業自体は意味のあるものだと思う。事実関係や法制度等について事前にきちんと把握してレベルの高い審議をするためには一定の事前調整は大切だ。しかしこれが膨大な超過勤務と土日出勤の犠牲によって成り立っているのだったらオンライン化の徹底によって改善するべきだ。

 地方議員の場合に時々、違法な口利きが問題になったり刑事事件に発展したりするケースがある。公務員と議員とのやりとりをオンライン化すればその内容も電子的に記録できるから不正防止にも多少は役に立つだろう。

 総じてオンライン化にはメリットがあり、進めるべきだが、人と人のコミュにケーションは、対面による表情や雰囲気によって初めて伝わることも多い。それを基本とした上で促進すべきである。

 特に議員は、地域において直接、多くの人と接触することで得られる生活実感を基礎として初めて民意を反映した政策が形成される。いつも海外で生活しながらオンラインのみで審議に参加する議員に国民が政治を委ねるとは考えられない。

 筆者は長く行政に身を置いていたが、議員を尊敬できる理由は、議員が常に人々の側に立ち、人々の生活実感に依拠して政策を考え発言しているからである。いつも海外にいる議員がオンラインで政策を発信しても説得力を持つことはできないと思う。議会審議のオンライン化は、議会制民主主義の一層の発展に役立つ方向で促進すべきだ。

   
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