2024年7月23日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月21日

 一方、この背景に全く政治的事情や権力闘争の側面がないわけではないだろう。そもそも2021年1月の第13回党大会での指導部選出は異例尽くしだった。チョン党書記長は健康不安にもかかわらず2期の再選上限と65歳の年齢上限の例外として77歳(当時)で3回目の再選。フック国家主席も年齢制限の例外として66歳(当時)、かつ、初めて首相から就任したが、チョン書記長の後任にはならなかった。

 現在は2026年までの共産党第13期のちょうど真ん中だが、既に次期指導部の選考をめぐり鞘当てが始まっているのは確かだ。当面はフック国家主席の後任に誰がなるか(当面は副国家主席が代行)が焦点だが、当然それはチョン書記長の後継者を巡るせめぎ合いと無縁ではない。

日越関係への影響は?

 それでは、今回の動きはベトナムの外交的立ち位置に影響を与えるのだろうか。結論的には、これらの動きの主要因はベトナム内政の事情であり、外交を含む政策面には大きな影響はないと言うのが現地での受け止めの大勢のようだ。

 ミン副首相(前外相)の退任や先般のチョン書記長の訪中をとらえ、外交政策が中国寄りになるという見方もあるが、元々ベトナムは党関係を基礎とした対中関係と、安全保障上の挑戦である中国に対応する上で重要な対米関係などの間で、戦略的危機感を持った全方位外交を維持してきた国であり、国民感情の中国への根強い反発を考えても、その基本は不変だと見るべきだろう。

 対日関係についても、退任したフック氏が日本シンパであることは良く知られているが、実際は、チョン書記長を含めベトナムの全ての主要リーダーが対日関係を重視していると言っても過言ではなく、日越関係はますます強化されると思われる。

 今回の一連の動きの中では経済政策は大きな争点になっていない。今後汚職対策が権力闘争の色彩を一層強めさらに過激化し経済成長に悪影響を及ぼす可能性はあろうが、この解説記事が指摘するように、多少の影響はあるにせよ、ベトナム経済の今後の短中期的好調は維持されるだろう。

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