米軍は2月4日(米東部時間)午後、米東方沖の領海上空で中国の偵察用とみられる大型の気球を撃墜した。中国は「強い不満と抗議」を表明、報復措置を示唆しているが、日本が今回の事案から学ぶべきは、中国の失策をしっかりと見定め、国際世論を味方につけながら自らの主張(政策)を実行する行動力だ。〝敵失〟に乗じる知恵と言ってもいい。
米国務長官訪中延期の裏で
中国の偵察用とみられる気球が米本土上空を飛行しているというニュースが、日本の新聞各紙で最初に報じられたのは3日の夕刊であった。米国防総省の発表直後の報道で、新聞の締め切り時間から逆算すれば、同日朝には「飛行ルートは大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射基地上空」、「問題の深刻さを中国に伝えた」との情報は伝わっていた。
だが、その時点で中国政府の反応は一切なく、ブリンケン米国務長官の訪中延期が伝えられた3日夜になって、中国は初めて外務省の報道官談話を公表。「気球は気象など科学的研究に使われる民間のもので、西風の影響で予定のコースを外れてしまった」と説明、米国に対し遺憾の意を表明した。
仮に中国が、気球が米アラスカ州から米本土に侵入した1月28日から31日の間に、「気象観測用の気球が誤って米領空に入り込んでしまった」と米政府に連絡していれば、それが真っ赤なウソであったとしても、その後の展開は大きく変わっていたであろう。しかし、状況を無視した中国の失策、言い換えれば〝敵失〟を米国は見逃さなかった。