日本に必要な備えとは
政府によれば、今回の気球と似た飛行物体は、2020年の6月と翌21年の9月に青森県八戸市など東北地方で目撃されている。同市内には陸上自衛隊と海上自衛隊の基地があり、近傍には米空軍三沢基地や米国の通信施設も点在しており、通信傍受など情報収集が目的だった可能性は高いだろう。
政府は今後、気球が領空に入れば、国際法上、航空機による領空侵犯と同様に対応するとしている。であるならば、日本周辺空域で気球の飛行を確認した段階で、無許可であればその事実を公表し、「日本の領空に入れば落下させる」と通告することを前もって決めておけば、政府の判断が遅れるという愚は避けられるはずだ。
米国は国家安全保障戦略で、中国を「唯一の競争相手」と位置づけ、同盟国との連携を強化する方針を示している。米国が気球撃墜を機に、世界中に張り巡らそうとしている中国気球の監視網はその一環だと言っていい。
政府は〝敵失〟に乗じた米国の知恵を学ぶ必要がある。中国の脅威と向き合う沖縄本島と宮古島間の宮古水道では今、中国の無人機運用が頻発している。今後は沖縄・尖閣諸島周辺海空域でも水中無人機を含め多発することが予想されている。
中国に対して毅然とした対応を取るためにも、米国はもとより、英豪などの友好国と連携しながら、気球にとどまらず中国の無人機運用への対応策や法整備を急ぐ必要がある。
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安全保障といえば、真っ先に「軍事」を思い浮かべる人が多いであろう。だが本来は「国を守る」という考え方で、想定し得るさまざまな脅威にいかに対峙するかを指す。日本人の歪んだ「安全保障観」を、今、見つめ直すべきだ。
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