2024年11月22日(金)

デジタル時代の経営・安全保障学

2023年2月28日

米英の諜報機関が今、最も警戒する

 22年7月、FBIのクリストファー・レイ長官と英国防諜機関情報保安部(MI5)のケン・マッカラム長官がロンドンで記者会見を行い、UFWDに警戒するよう呼びかけを行っている。レイ長官は、米国議会議員候補を標的とした例や、遺伝子組み換え種子の情報を得るために、中国企業のために働いている人物を捕まえたことなど、FBIの調査結果を例に挙げた。マッカラム長官は、英国の航空宇宙部門を標的にした例を挙げ、MI5が英国での中国の活動に関して18年比で7倍の調査を行っていると述べている。

 UFWDの最も重要な任務は、中国に対する好意的な国際世論を形成することであるが、MI5は、21年1月にロンドンで法律事務所を経営するクリスティン・チン・クイ・リーに警告を出している。警告はUFWDに所属するリーが、労働党の下院議員バリー・ガーディナーに42万ポンド(約6500万円)を寄付したというものである。ガーディナー下院議員は、英国の原子力産業への中国の投資を支持するなど中国寄りの立場をとっているとされるが、このようなケースは他にも沢山あるだろうし、日本の国会議員にも似たようなケースがあるのではないだろうか。

日本でも例外なく活動を続ける

 日本でもUFWDの活動は例外ではない。その一つに孔子学院がある。孔子学院とは、統一戦線工作部の議長だった劉延東元副首相が、04年に中国国家対外漢語教学領導小組弁公室(20年6月より中国の大学および企業・団体等による「中国国際中文教育基金会」に移管)のもとに設立したプロパガンダ組織である。

 表向きは、中国共産党が中国語教育と中国文化の紹介のために立ち上げた国家プロジェクトであるが、第17期政治局常務委員(序列5位)であった李長春は、孔子学院が中国の外国におけるプロパガンダ組織の重要な一部であると公式に認めている。孔子学院は今も統一戦線工作部と正式に提携している中国共産党のプロパガンダ部門から資金提供されているといわれている。

 日本では05年から中国国際中文教育基金会と協定した立命館大学、愛知大学、早稲田大学など、全国で15の大学に孔子学院が開設されている(このうち工学院大学は21年に、兵庫医科大学22年に閉鎖を決めている)。孔子学院の設置には、法令による認可や届け出は必要がないため、文部科学省でもその実態が把握できていない。

立命館孔子学院のホームページ

 米国では、トランプ政権時代にマイク・ポンペオ国務長官が20年に孔子学院は、中国共産党のプロパガンダ工作に使われているとして、米国の孔子学院を統括している孔子学院米国センターを大使館や領事館と同等の外国公館に指定している。また、バイデン政権でもウィリアム・バーンズCIA長官が公聴会で「孔子学院は真のリスクだ。自身が大学の学長なら孔子学院を閉鎖する」と述べている。米国では、113あった孔子学院は、34にまで減少している。

 英国のスナク首相は、英国内の30校全ての孔子学院を閉鎖するとしている。同様にインドや豪州でも閉鎖に動きつつある中で、日本の動きはあまりにも遅いといえよう。


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