さまざまな問題があったことは間違いないが、中国を世界一のEV市場へと発展させる大きな支えになったこともまた事実だ。その補助金が昨年末に終了した。
補助金は年々縮小されて、22年時点では1万元(約20万円)前後である。この補助金がなくなった分、EVが値上げされたことが消費者離れにつながった可能性もある。
内燃車を含む自動車全体の1月期販売台数は35%減。49.9%減のEVよりも減少幅は少ない。この差が補助金終了の効果の可能性があるわけだ。
金の切れ目が縁の切れ目ではないが、補助金終了は中国EV産業にとって苦い思い出がある。EV補助金はもともと19年に終了する予定だった。終了前に補助金額が減額されると、たちまち販売台数は急落。このまま補助金が打ち切られれば中国EV産業は潰滅しかねないとまでささやかれた。
新型コロナウイルス流行を受けての経済対策として補助金が延長されたことで、どうにか大惨事は免れたが、絶好調に見える中国EV産業もほんの数年前には土俵際にまで追い込まれていたわけだ。
23年も同じことが繰り返されるのか。それとも、消費者はEVを買い支えるのか? 今年が勝負の年となる。
苦闘の末に認められた〝体験〟
強気派は「中国の消費者はEV体験を認めた」ことを根拠としている。
前述したとおり、中国EV産業は長年、補助金を頼みにどうにか生きながらえてきた。補助金があっても販売台数は大きく伸びず、補助金を削ればまったく売れないというどうしようもない状況だったわけだ。
ところが20年の後半に状況が変わり、いきなりEVが売れ出すようになる。
中国の消費者はなぜ突然、EVを買い出すようになったのか。中国の自動車業界関係者に話を聞いてもはっきりとした返事は帰ってこない。
テスラの異常な株価上昇でEVに注目が集まった、上海工場での生産が始まりテスラ車が中国で売れたことで中国製EVへの興味も高まった、中国の電気料金は非常に安くガソリン価格高騰によって運用コストの安さが目立つようになった……。こうしたことも一因だろうが、それ以上に「EV体験の良さが消費者に伝わった」のではないかとささやかれている。
自宅に充電ステーションがあればガソリンスタンドに行く必要がない、加速性能が高く街乗りでストレスがない、大きなディスプレイがついていてゲームや動画などのエンタメを楽しみやすい……。こうしたEVならではの魅力が浸透したことによって、「仕方なく買う車」から「欲しいから買う車」へとステージが変わったのだ、と。
そうだとすれば、補助金がなくなったとしてもEVは売れ続ける。これが強気派の考え方となる。