2024年6月17日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年3月1日

EV普及率の〝天井〟はどこに?

 ただ、EVは内燃車をそのまま置き換えできるものではないという点には注意が必要だろう。

 ビル・ゲイツ、山田文訳『地球の未来のため僕が決断したこと』(早川書房、2021年)は温室効果ガス排出ゼロを実現するためにはどのような取り組みが必要かを展望した本だ。EVにも大きな期待を寄せているが、すべての車を電動化することは難しいと指摘している。

 残念ながら、長距離バスやトラックにとってバッテリーはあまり実用的な選択肢ではない。動かす乗り物が大きくなればなるほど、そして充電なしで運転する距離が長くなればなるほど、電気でエンジンを動かすのはむずかしくなる。バッテリーは重たく、限られた量のエネルギーしか蓄えられず、しかも一度に一定量のエネルギーしか供給できないからだ。
「第7章 移動する 年間510億トンの7パーセント」ビル・ゲイツ、山田文訳『地球の未来のため僕が決断したこと』(早川書房、2021年)

 これは政府側から見た視点だが、消費者からみても、EVに切り替えて問題ないケースもあれば、そうではないケースがあることを意味する。自宅に充電設備を設置できるか、極端な寒冷地かどうか、遠出する用途が多いかどうかなど、いくつかの項目でEVが合うか合わないかをチェックする必要がある。その結果、EVが欲しくても自分の環境には合わないという人も出てくるだろう。

 問題はそれがどの程度の数なのか、どの程度の比率で内燃車からEVへの置き換えが可能なのかという点になるだろう。22年、中国の新車販売に占めるEVの比率は20%に達した。5台に1台がEV、この数字がどこで天井にぶつかるのだろうか。

伸長するPHEVの存在

 EV以外にニーズが向かう、その予兆はすでに見えつつあるのかもしれない。下図はNEVの販売台数をBEV(バッテリーだけの電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド、充電が可能なハイブリッド車)に分けて示したものである。

(出所)中国自動車工業協会統計をもとに筆者作成 写真を拡大

 数こそBEVのほうが多いものの、増加率ではPHEVが圧倒している。22年実績ではBEVは前年比81.6%増に対し、PHEVは151.6%増と大きく上回った。自分の利用シーンとBEVが合わない、ガソリンエンジンもついているほうがいいというニーズが掘り起こされている。

 また、もう一つのNEVである燃料電池車の22年販売台数は1000台ときわめて少ないが、中国政府は重点技術分野として力を入れている。燃料電池のエネルギー密度はバッテリーをはるかに上回るほか、充電と比べれば水素の供給は短時間で終わる。

 安全性や水素ステーション構築などの課題は残るとはいえ、有力な選択肢というわけだ。中国国家発展改革委員会が今年3月に発表した「水素エネルギー産業発展中長期計画2021~2035」では25年までに燃料電池車の累計販売台数5万台突破を数値目標としている。

 未来の自動車市場はEV、PHEV、水素自動車、そして内燃車が共存すると予想されるが、その最適の比率はどこになるのか。日本にとっても重要な課題なだけに、EVで先行する中国がどこで天井にぶつかるのかは注視すべきテーマだろう。

   
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