2023年2月2日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年1月18日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

 1カ月で9億人が新型コロナウイルスに感染した。

 北京大学国家発展研究院の研究チームによる衝撃的なレポートだ。感染爆発が続くなか、ほとんどの感染者は病院に行かず、自宅療養している。そのため正確な感染数は把握不可能だ。北京大学は「発熱」「せき」などの症状をキーワードとする検索回数の増加率から、14億中国人の64%に相当する「9億人」が1月11日までに感染したと推定している。

中国では、コロナの感染拡大が続いている(ロイター/アフロ)

 中国のコロナ対策が実質的に撤回されたのは12月7日のこと。約1カ月で9億人が感染するという、超感染爆発が起きたわけだ(ちなみに、コロナ対策の基本方針である「新型コロナ感染対策プラン第9版」では「動態的ゼロコロナの層方針を全面的に実行する」との文言がある。いまだに第9版は廃棄されていないため、公式には今もゼロコロナ実行中という建て前になる)。

コロナ対策し切れていない中国社会

 コロナ対策転換当時、中国政府の医療専門家は3カ月程度でピークを迎えるとの見方を示していたが、実際には約3週間、12月下旬にはピークを超えたという。完全に予想を超えた広がりというわけだ。そのため対応も後手に回った。

 もともと、ゼロコロナの解除にはワクチン接種率の向上、医療体制の拡充、コロナ治療薬の準備という3点が条件になると言われてきた。約3年にわたるゼロコロナ対策を続けてきた中国は対応のために十分な準備期間があったはずだが、PCR検査や濃厚接触者の隔離、ロックダウンなどゼロコロナ対策の維持に多くのリソースを注ぎ込んだため、ほとんど進展してなかった。

 ワクチン接種ではゼロコロナ転換の2日前、12月5日になってようやく「高齢者のコロナワクチン接種強化の業務ソリューション」が発表された。中国全体のワクチン接種率(2回)は11月28日時点で90%を超えるが、80歳以上に限ればワクチン1回接種は76.6%、2回接種率は65.8%、3回接種率は40%と低い。1月末までに1回接種を90%に引き上げる目標が打ち出されたが、感染爆発が続くなか、ワクチン接種は思うようには進んでいないようだ。

 医療体制の拡充もゼロコロナ転換が決まってようやく本格的に始動した。中国の重症病棟はもともと10万人あたり4床以下ときわめて少なく、コロナ禍でも拡張が進まなかった。医療体制の拡充は一朝一夕ではできないなどと言われていたのが、この1カ月あまりでほぼ3倍にまで増やしたと発表されている。「医師はそう簡単に育てられない」と言われてきたのが、この1カ月だけで重症病床の対応ができる医師の数は5万人の増加、看護師20万人ほど増えたとのこと、今まではいったいなんだったのだと聞きたくなる。


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