修正成長率と民主主義と腐敗
上記の結果から期首の所得水準が同じであったらどの程度の成長率になっていたかという修正成長率を考えることができる。修正成長率(%)=現実の成長率(%)+0.04153×期首の1人当たりGDP(1000ドル単位)-1.9561となる。
なお、ここで期首の所得により成長率の差をどれだけ埋めるかが大事で、結果としての成長率の水準には意味がない。この修正成長率と民主主義指数の関係を見たのが図3である。
図3に見るように、民主主義の国ほど成長率が高い傾向があるようにも見えるが、その傾向は極めて弱いものである。ここでこの傾向を弱めているのは、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、タジキスタン、ウズベキスタンなど最近になって資源開発が進んだ国である。中国、べトナム、ラオス、カンボジアは、中国に似た政治体制の国である。ミャンマーは民主化によって外資が流入して成長率が高まったが、クーデターにより民主主義指数が急落した国である。エチオピアがなぜ貧しい国の中で急成長しているかは良く分からない。
以上から、資源国とミャンマーは、民主主義の程度と別の要因で成長率が高い国であることが明らかである。これらの国を除くと成長率の民主主義の関係は強くなる。
次に、腐敗と修正成長率の関係を考える。こちらでは、修正成長率(%)=現実の成長率(%)+0.06385×期首の1人当たりGDP(1000ドル単位)-1.1626となる。この修正成長率と腐敗認識指数の関係を見たのが図4である。
ここでも、トルクメニスタン、アゼルバイジャン、タジキスタなどの新興の資源国と、中国、カンボジアなどが、腐敗の割に成長率の高い国となっている。ガイアナも新興の資源国である。腐敗と経済成長の関係は明らかであるが、新興の資源国を除けば、さらに強い関係となる。
やはり民主主義は経済成長に寄与し得る
最後に、民主主義と腐敗の関係を考える必要があるが、民主主義の度合いが高いほど腐敗は減る。民主主義の国であれば、政府の腐敗は、自由な報道機関や野党に批判されるからだ。腐敗が減少すれば、経済はより順調に成長することは前回述べた通りである。
民主主義はうまくできないという議論が根強くある。民主主義国家は、コロナのような感染症対応もうまくできないし、成長率も低いという語論がある。しかし、このような主張には根拠がない。