2024年11月22日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2023年3月15日

 図1は、単純に民主主義指数と成長率の関係を示したものである。図から民主主義と成長率には関係がないことが分かる。

 図2は、腐敗(大きい数字が腐敗が少ないことを示す)と経済成長の関係を示したものであるが、こちらも関係がないことが分かる。

期首の所得を考慮すべき

 経済成長率と民主主義や腐敗とに関係がないという結果が得られたのは、重要な変数を見逃しているからである。貧しい国は豊かな国の技術や制度から学ぶことで、より高い成長ができるが、豊かな国はこれ以上真似る余地が少ないので成長率が低下する。このことは、多くの実証研究で確認されている(Robert J. Barro and Xavier Sala-i-Martin, Economic Growth, 2nd edition, Chapter 11 and 12, The MIT Press, 2004)。

 また、資源の恩恵で成長率が高まることがある。さらに、コロナで明らかになったように、権威主義国のデータは権力者に有利なように歪んでいる可能性がある。これらのうち、期首時点の豊かさを考える。

 成長率(%)を民主主義または腐敗に加え期首(2000年)の所得(1000ドル単位)で説明する。これは初期において所得の低い国の成長率は高く、所得の高い国の成長率は低くなることを考慮するための変数である。

 結果は、表1の推計値が得られる。民主主義指数、また腐敗指数(大きい数字が腐敗が少ない)が大きいほど、成長率が高まり、期首の所得の係数がマイナスであるから、期首の所得が高いほど成長率が低くなる傾向があることが分かる。係数の下の数字はt値であるが、十分に説明力があることを示している(t値は、通常2以上あれば合格とされている)。


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