2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年4月3日

 中国が掲げている「中国の人権」のもと、新疆・香港・チベット・人権派弁護士・白紙運動参加者など、夥しい数の人々が断罪されているのは、このような「発展権」と「中国夢」の関係を絶対視する習近平思想と根本的に抵触するからである。「発展」に必要な「社会の安定」を乱す独自の主張は、西側など外部勢力の悪しき影響を受けたものであり、弾圧と再教育の対象でしかない。

 むしろ中共は、国連などの場で新疆問題や香港問題をめぐって中共の側に立ち(少なくとも西側と意見を同じくせず)、中国流の厳格な社会管理に関心を示す途上国が少なくないことを以て、「未だ貧困から脱していない国家にとって、中国こそが大きな参考事例を提供している。今や、搾取や不均衡を解決できない西側ではなく、中国の人権と発展観念こそが、人権をめぐる世界的取り組みに積極的な貢献している」と開き直っている。

 そして「西側の歴史的経験しか踏まえていない人権観念を最も良いものとして他国に強要すべきではない。各国には自国の「国情」に照らした人権を自主的に選択する権利を有するということである。人権観念を異にする文明・国家が互いに尊重・包容し、交流を通じて相互に鑑とすることが重要である」と強調する。(中国外交部22年09月28日記者会見を筆者要約)

 習近平思想を核心とする中共の言説において、剥き出しの強権・弾圧、未曾有の発展・繁栄、そして国際社会における途上国を中心とした多数派形成は、彼らなりに矛盾することなく連続していることに注意すべきであろう。

全面的に「中国のガバナンス」を推し広げる時代へ

 そこで今や習近平・中共は、昨年秋の中共第20回党大会の流れを受けて、さらなる習近平独裁強化と社会主義現代化強国建設を通じた「共同富裕」「中華民族の偉大な復興」「中国夢」の実現に向けて、必要な枠組みと経済力を整えるためにさまざまな政策を展開している。今般の全国人民代表大会(以下、全人代)における、李克強元首相の2023年政府活動報告、そして李強新首相の記者会見の内容を総合すると、概ね以下の通りである。

 疫病による経済の落ち込みからの回復を通じて「穏の中に進を求める」流れを実現し、「製造強国・宇宙強国・交通強国・ネット強国・デジタル中国」を推進する。その上で、経済における「国内大循環」の強化、高度科学技術の争奪戦勝利、自立したサプライチェーンの強靭化を実現する。

 民間企業の自由な活動への制約が、政府のあからさまな干渉や国有企業への優遇とともに強まっている問題をめぐっては、さらなる「法治化」を通じて、民営企業にも公平な市場環境を提供する。

 その結果、中国の市場としての将来性は大きく開け、外資にとっても魅力が増す。継続的に外資と技術が中国に流入すれば、中国の科学技術の自立と自強にとって一層有利である。

 こうして経済の大循環を作り出すことにより、若年層の就職難や地方経済の危機といった問題も次第に解決し、習近平思想と「中国の智慧」の正しさは無限に実証され、「中国の人権」の核心である生存権・発展権も「共同富裕」のもとで充足され続ける。

 その中で人々は、中国の文明的な魅力への信念とともに「中華民族共同体意識」を強め、内外で中国の力と恩恵が無限に溢れ出ることで、「中華民族の偉大な復興」が実現する。

 国際社会においても、今や米国・西側ではなく中国こそが世界平和の建設者・世界発展の貢献者・国際秩序の擁護者であり、人類運命共同体構築の推進者であるという姿を示すことができる。

「中国のグローバリズム」による西側批判

 こうして中共と中国政府は、習近平思想に全面的に依拠して、その精神を忠実に実践する機関となった。その立場から見れば、中国の特色ある人権観念とガバナンスこそ中国を救い発展させたのであり、西側のいう既存の普遍的価値を取り入れても自国の「国情」に合わないことが明らかで、混乱の源でしかない。中共は、他の非西側地域大国(例えばロシア)や途上国にとっても同様であるとみなし、今こそ内政不干渉の原則を改めて徹底させ、各国が互いの「国情」を尊重したうえで戦略的・経済的利益を共有することこそ、真の世界平和とグローバル発展の道であるという宣伝を強めている。いくつかの例を要約して紹介する。

【グローバル人権は如何にあるべきか……2022年9月2日及び27日、国連人権高等弁務官の新疆報告をめぐる中国外交部記者会見】
新疆問題はそもそも民族・宗教・人権問題ではない。(安定と発展によって実現される「中国の人権」に反するゆえに)反テロ・宗教極端化除去・反分裂の問題である。
したがって、ジェノサイドと称する対中批判は、米国および一部の反華西側勢力が中国を制するための政治的陰謀・でっち上げであり、中国人民の発展と進歩を阻むことは出来ず、必ず失敗する。
国連人権理事会をはじめ国際機関は、(西側の陰謀に左右されない)普遍・客観・非政治化を原則とすべきである。人権理事会を政治的道具として途上国を侮辱し圧力をかけ、人権理事会の雰囲気を悪化させ、国際人権協力を破壊するべきではない。
そもそも歴史的に見れば、西側こそがジェノサイド・奴隷制・強制労働を犯している。それを脇に置いて教師面し、ダブルスタンダードを取るべきではない。
米国や西側の一方的な経済制裁こそ、他国の発展を妨げ、人権を深刻に侵犯する。海外での軍事行動も無辜(むこ)の平民をみだりに殺す。
今や多くの途上国が国際機関で声を上げて中国を支持しており、これこそが国際社会の主流である。西側は国際社会を代表していないし、世界人口の10%に満たない西側出身者が国際機関の8割以上の職位を占めるべきではない。米国や西側は真剣に悔い改めて、自身の人権上の義務を実際の行動で履行せよ。

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