2024年4月29日(月)

教養としての中東情勢

2023年4月12日

 衝突事件後、パレスチナ自治区ガザを支配する「ハマス」がイスラエルに向け40発を超えるロケット弾を発射。北部のレバノンからもロケット弾34発が発射された。加えてシリアからも8日から9日にかけて6発のロケット弾攻撃があった。

 レバノン領内からの攻撃でユダヤ人1人が負傷した。イスラエル軍はガザ、レバノン南部、シリア・ダマスカス近郊の軍事拠点を報復爆撃した。

イスラエル攻撃で利害が一致

 一連の事態の中で、最も注目されるのは「ハマス」と「ヒズボラ」が共闘して攻撃を実行したことだろう。「ハマス」はパレスチナの主流派組織「ファタハ」との〝内戦〟に勝利し、2007年以来、ガザ地区を掌握、イスラエルとの対決を続けてきた。

 一方の「ヒズボラ」はレバノン最大の軍事・政治組織で、事実上同国の支配者だ。06年にはイスラエルと全面戦争を展開したが、その後は大規模な戦闘を控え、力を蓄えてきた。両組織とも、イスラエルの天敵であるイランからの援助を受けている。

 しかし、ここ10年はシリア内戦への関与をめぐって対立し、関係が冷却化していた。「ヒズボラ」はイランがシリアのアサド政権を支援したのに同調し、戦闘部隊を派遣して反政府勢力と戦った。「ヒズボラ」、イラン、アサド政権はイスラム教シーア派の信奉者である。

 ところが、「ハマス」の主流はスンニ派イスラム教徒。シリアの反政府勢力と同じ宗派に属している。

 この関係で内戦では反政府勢力を支援したため、イランや「ヒズボラ」との関係が微妙となった。だがニューヨーク・タイムズによると、数年前に「ハマス」の政治局副局長にサレハ・アロウリ氏が就き、関係改善が始まった。

 同氏はイランを訪問して要人と会談、その直後に今度はレバノンで「ヒズボラ」の指導者ナスララ師と面談し、レバノンでの「ハマス」の拠点作りを進めた。危機感を覚えたイスラエルは車爆弾で同氏の暗殺を謀ったが失敗したという。

 「ヒズボラ」がイスラエル攻撃に直接加担したかどうかは明らかではないが、南部レバノンを支配下に置く同組織の了承なしに「ハマス」がロケット弾を発射することは困難で、両組織が共闘していることは確実だ。この共闘はイスラエルにとっては厄介だ。これまではガザ地区の「ハマス」を中心に警戒してきたが、今後はレバノンからの攻撃にも対処が必要だ。


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