両組織が共闘するメリットはあるのか。「ハマス」にとってはイスラエルへの攻撃をレバノンから実施することで、イスラエルによるガザへの報復を軽減することができるという狙いがある。「ヒズボラ」にとっても、イスラエル攻撃を「ハマス」に実行させることで、「ヒズボラ」の拠点に対する直接的な報復を回避することが可能だ。
もう一つ指摘しておかなければならないのは、レバノンやシリアからの一連の攻撃はネタニヤフ首相が進める司法改革でイスラエル国内が混乱しているスキをついたという点だろう。ナスララ師は「イスラエルは崩壊寸前だ」と混乱状態に言及している。
米が潜水艦急派でイランけん制
こうした聖地での衝突をめぐる緊張の高まりの中、イランとイスラエルによる〝影の戦争〟が激化しそうな状況にもなっている。米第五艦隊は8日、トマホーク巡航ミサイル154発搭載の攻撃型潜水艦「フロリダ」をアラビア海やペルシャ湾海域に急派した、と発表した。
ニューヨーク・タイムズが米軍やイスラエル情報機関当局者の話として伝えるところによると、イラン革命防衛隊によるイスラエルの民間船舶に対するドローン攻撃が切迫しており、「フロリダ」の派遣はイランの攻撃を抑止することが目的だという。
米軍が潜水艦の派遣そのものや位置を公表することは極めて異例。あえて踏み切ったのはイランに明確な警告メッセージを伝えるためだ。イスラエル軍が3月にシリア領内を空爆した際、イラン革命防衛隊2人が死亡しており、イランはこの報復を宣言していた。
イスラエルのガラント国防相は8日、オースティン米国防長官と会談した後「わが国民に対するいかなる脅威も容認しない」との声明を発表した。聖地をめぐる紛争は石油の宝庫ペルシャ湾にも拡大しそうな雲行きだ。