しかし、このバイデン・イニシアティブは、もう少し肯定的に評価しても良いように思われる。ルースの主張にも一理あるが、やはり民主主義国が結束を示すことは必要であり、このサミット・イニシアティブとルースの提唱する手法とは両立可能であろう。
分断を深めるとの批判は、民主主義サミットはまさに世界に台頭する独裁主義に対抗するイニシアティブであるので、中国の反発は当然であり、批判は当たらない。無原則的な対中融和論は、中国の主張の容認となる。少なくとも、サミットにおいては中国に対する名指しの批判は控える配慮は行っている。
途上国にはきめ細かい対応も必要
参加基準が不明確だとの批判については、確かにもう少し柔軟な対応をして、ハンガリー、トルコ、エジプトなど、民主的な制度が存在し一応機能している国の参加は認めても良いのではないか。ここは潔癖症のバイデンのハードルが高すぎるかもしれない。
また、米国外交にとり重要なパートナーであるベトナム、タイ、シンガポールやアラブの君主制国家などが排除されるという問題があるが、これらの完全に民主的とは言えない国々も民主化促進の観点から希望すれば参加を認めるか、あるいは、別途の手当てが必要であろう。
米国は、既に、ラテンアメリカ、東南アジア諸国連合(ASEAN)、アフリカなど、地域ごとの首脳レベルでの対話を行っているが、アラブ諸国など国によっては更にきめの細かい対応も必要であろう。日本政府が民主主義の強化に資する人材育成や制度整備を支援しているように、民主的制度を強化する意思のある国々については、このサミットのアウトリーチとして様々な支援の手を差し延べるという対応もあってよいと思われる。