2024年4月20日(土)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年4月24日

(注)国交省HPの意見募集窓口、地方運輸局からの連絡、 適正化事業実施機関との連携等により、 国交省において端緒情報を収集(23年3月末現在)

 中小零細企業の荷主はそこまで強要しない。結局、大手の荷主は親方商売だ。そして、大手の物流担当者は、自分の力で荷物を動かすわけではないのに、コストカットしたことが会社に貢献したとして評価される。おかしな話だ。

 若手で、退職者が出てきている。そもそも、ずっと働くという認識がないのかもしれない。また、荷主から怒られることにも慣れていない。電話で話したり、分からないことを聞くことが苦手な人もいる。

 基本的に、若手の教育は同世代の人に任せている。採用も新入社員が選考を行う。一番気持ちが分かるからだ。昨年度は10人採用して、1カ月で2人が辞めた。今年度は4人で、全員大卒だ。

 志望動機は、さまざまだ。昔は車が好きという人も多かったが、映画『トラック野郎』に憧れる人はもういない。ただ、昔は、どんな格好でも態度が悪くても時間通りにモノを運べばよかったが今は違う。言葉遣い、身だしなみ、余計なことを話すな、という風潮が強い。最も問題だと感じることは、常に下に見られることだ。「ありがとう」という感謝がない。それが若手たちには我慢ができないのだろう。

 女性は、積極的に採用している。今は15人ほどだが、一時期は30人程度はいた。当社には、保育園が2つある。女性社員から、3年後、5年後のわが社のありたい姿を問われ「もっと女性社員を登用したい」と答えたら、「それなら保育園をやろう」となった。企業主導型の保育園だ。 

 女性のドライバーは、学校給食の配送を担当してもらうことが多い。学校が休みの日は、給食はないので、子どもと一緒に自宅にいることができる。行政系の仕事は固定したものが多いのでシフトも組みやすい。

 和歌山県和歌山市、鳥羽運送の鳥羽弘基社長。トラック保有台数約100台、ドライバー約90人。運ぶ荷物は食品関係が多い。

ドライバーの努力を
消費者にも分かってほしい

長距離輸送は多くの中小零細企業が担っていることを知ってほしいと話す鳥羽運送の鳥羽社長

 大手の荷主とは運賃値上げ交渉はしているが実現できていない。大手企業は社員の賃金を上げると言っているが、われわれ中小の運送会社に払う運賃は上がっていない。社員の賃上げをするなら、運賃もそれに見合う形で上げてほしい。

 消費者の自宅に届ける宅配と違い、東京〜大阪間のような長距離輸送を担っているのは中小零細運送業のドライバーたちだ。彼らは眠い目をこすってお客様の商品を届けるためにトラックを走らせている。

「好きで選んだ仕事なのでは?」と思う方もいるかもしれないが、一方でこうしたドライバーたちの努力で成り立っていることを、宅配荷物を受け取っている消費者の皆さんにも分かってほしい。

 わが社は高齢ドライバーの仕事場を確保することもあって観光バス事業もしている。観光バスの場合、最低運賃規制があるが(東京〜大阪間で7万円程度)、運送業では規制・罰則がない。このため、荷主は安い運賃で運べる業者を選びたがる。ドライバーを確保するためには、観光バスのような、最低運賃規制が絶対に必要だ。

 一番問題なのが、大手の同業者が中小の運送会社をいじめている点だ。大手はより安い運賃で運んでくれる中小零細の会社を使っている。下請けで引き受ける場合は、無理な要求を受けざるを得ない。


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