2024年11月21日(木)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年4月24日

 公正取引委員会がこうした無理な要求をしている会社の名前を公表したが、公表された会社のほかにも交渉の場すら持てず、具体的な案件の提案にまで行きつけない会社がいくつもあるので、公取にはもっと頑張ってもらいたい。

 また、中小零細では残業規制が導入されることによって、廃業するところが出るのではないかと危惧している。中継輸送などの対策は大手ならできるが、荷物量が少なく定期便の輸送ではない中小零細はこうしたことはできない。

 日本の物流は世界一の品質を維持できている。それらを支えているのは、われわれ中小の運送業者が法令違反ギリギリの状況で走り続けているからだ。今のままの状況が続けば、ドライバーのなり手がいなくなり、荷物の運び手もなくなり、物流に混乱が起きるのではないか。

 千葉県四街道市、日東物流の菅原拓也社長。トラック保有台数78台。ドライバー91人。スーパー向けの鮮魚商品など冷蔵品を主に輸送する。

「コンプライアンスは二の次」
古い体質にメスを入れる

社内の風潮を変えるのと同時並行で事業の変革も進めた日東物流の菅原社長

 私は、大手物流会社を経て、父が創業した日東物流に2008年に入社した。その2カ月後に、社員が追突死亡事故を起こした。これをきっかけとして、会社の構造改革に着手した。「依頼された仕事は極力受託、コンプライアンスは二の次」といった風潮をただすべく、無理な仕事からは手を引くようにした。つまり、売り上げは落としても、利益を上げることを考えた。

 同時に、労働時間管理の適正化を進め、就業規則を見直し、社会保険未加入者もなくした。社員ドライバーには、健康診断の受診を徹底させ、トラックの完全禁煙化も進めた。当然、父親を含めてドライバーからも、「コンプライアンスを守っていては稼げない」と大きな反発を受けた。

「荷物さえ運んでおけば誰にも干渉されない」ということからドライバーの仕事を選んだ人も多かった。だが、私は会社を引き継ぐにあたって、そのような風潮こそ変えなければならないと考えた。

 改革は道半ばだが、利益を確保しながら、21年には「改善基準告示」に定められた「ドライバーの1カ月最大拘束時間293時間以内」を達成した。だが、来年からはそれが284時間以内となるため、さらなる改革が必要となる。


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