2024年12月22日(日)

都市vs地方 

2023年4月21日

 統一地方選挙を経て体制一新する地方自治体も少なくないだろう。総合計画の更新を控えている自治体なら、次期計画の検討にあたって、新しい首長や議会議員が選挙期間中に掲げた公約が反映されるはずだ。

 もっとも、耳あたりの良い公約がすべて実現可能というわけではない。少なくとも実現に先立つ財源が問題になる。

(bee32/maruco/gettyimages)

 新しい施策の財源をいかに手当てするのか。ハードルは高いが税収アップを目指すか、それとも積立金等を取り崩すか、新たに借り入れをするか。先行き財政破たんを起こさないように注意しなければならない。次世代にツケを残すようなことは避けたいものだ。

 新しい施策に着手するため、優先順位が低い既存事業を止めるという手もある。施策のスクラップ&ビルドだ。これなら財政に悪い影響をもたらさない。

 10年以上も前、「コンクリートから人へ」という一節が人口に膾炙(かいしゃ)した。限られた税財源の配分をいかに調整するか、総合計画の冒頭に挙げられる〝理念〟ないし〝ビジョン〟はこの問いの回答となるものでなければならない。

 財源に厳しい制約がある中で、必要とあればすべて取り組む「あれもこれも」型の財政運営から、重要性と緊急性で優先順位をつけ「あれかこれか」型の財政運営への転換が求められる。優先順位をつけるためには将来の明確なビジョンが必要だ。

 福祉関連の公約ならば、その施策が目の前の、あるいは将来の、まちの課題を解決するかが採否のポイントだ。他方、財政の観点ではその支出が将来の財政悪化をもたらさないかが重要だ。経済活性化策ならばそれが所得や雇用をもたらすものかが着眼点だが、財政の観点で言えばその助成金がその後の税収増に還元されるかも重要になる。

 この観点があるかないかで、その施策がバラマキか否かが決まる。耳あたり良い公約はこうした目線を持っているだろうか。

自治体財政の「収支」は企業会計と似て非なるもの

 とはいえ自治体の財政は難しい。耳慣れない専門用語が多いだけではない。同じ用語でも行政関係とそれ以外、つまり公会計と企業会計で定義が異なるものがある。

 例えば「収支」だ。歳入から歳出を引いた差額を「形式収支」という。しかしこれは企業会計でいう利益とは似て非なるものである。まず、「歳入」と言っても企業の決算書でいう「売上高」や「経常収益」とは異なる。歳入には税収だけでなく借入金が含まれるからだ。

 「歳出」も同様である。歳出は主に人件費など経常経費が計上されるが、借入返済や設備投資も含まれている。したがって、歳入から歳出を引いた形式収支は利益の概念からはほど遠く、財政状態の良し悪し、ひいては財政運営の巧拙を反映するものではない。

 そもそも、形式収支は「収支」という名前からフロー概念に属しているように見えるがフローではない。歳入には前年度末の繰越金が含まれるので、形式収支は次年度に繰り越される年度末の「残高」だ。要するにストック概念である。

 とはいえ、厳密に言えば現金残高とも異なる。歳出には基金への積立が含まれ、この基金の内訳の1つに資金繰り調整のための「財政調整基金」があるからだ。財政調整基金への積立を増やして形式収支を減らすこともできる。一般的な会計用語の「現金預金」とは概念も額も異なる。


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