2024年11月22日(金)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年3月23日

 地方議会は国会に比べて身近な存在であるはずだが、「実態がよく分からない」という人がほとんどではないか。地方議会に詳しい辻教授に素朴な疑問をぶつけてみた。
(イラスト・マグマジャイアンツ)

Q 地方議会(議員)のことをよく知りませんし、普段意識することもあまりありません。なぜ関心が高まらないのでしょうか。

 地方議会(以下、議会)が平日昼間に開催されていて、多くの勤め人にとって傍聴が難しいことが影響していると思います。また、首長と議会の間で、あるいは会派間・議員間で大きな衝突がない限り、新聞やテレビなどのメディアも報じないため、住民が自分の住む自治体の議会に視線を向ける機会は限られています。

 とはいえ、そもそも、議会は日本国憲法第93条により必置です。また、同条第2項は、自治体の長(都道府県知事や市区町村長のこと、一般に首長と呼ぶ)と地方議員を住民が直接選挙することを定めていて、この仕組みのことを二元代表制といいます。

 二元代表制は、日本の国レベルで採用されている議院内閣制よりも、米国などで採用されている大統領制に近い制度です。ただ、米国大統領には法案・予算案の提出権がないのですが、二元代表制で首長は条例案を提出できるだけでなく、予算案の調製・提出権を独占しています。そのため、各議員は道路事業でも福祉でも、なにがしか政策を実現しようとすると、予算が必要ですから、首長の協力を得なければいけません。つまり、その政策の執行に必要な額を予算案に盛り込んでもらう必要があります。

 また、予算案を可決しないと執行できないので、各議員は予算案に賛成する誘引を持ちます。その結果、首長の提出したほとんどの議案は修正なく可決されることになり、まるで議会が役目を果たしていないかのように、住民の目に映りやすくなります。

Q地方議員の不祥事が相次いでいて不信感を抱いています。地方議員の定数や議員報酬をもっと削減してもいいのでは。

 地方議員には、首長に対する監視機能を果たすだけでなく、住民を代表してその声を行政に届ける役割があります。例えば、議員の「地元」である地域や、議員がそれまで経験してきた職業(農業や勤労者など)といった目線から、必要とされる利益を代弁する任務を担っています。

 しかし、議員の数が減れば減るほど、議員によってカバーされる地域や職業は減ることになり、住民の声を自治体の中核にまで届けることが難しくなります。それは住民全体にとって好ましいこととはいえません。しかし、議員の数は、平成の大合併の影響もあり、1998年末には全国で6万3000人あまりいましたが、2021年末には3万2000人ほどへと半減しました。

 議員報酬についても、減額すべきとする声がやみません。確かに、都道府県議会議員の月額議員報酬は平均して80万円台(条例上)であり、政令市などを含む人口50万人以上の市では平均して72万円ほど(21年現在、以下同じ)になっています。しかし、人口が5万人を切る市では平均33万円、町村では、町村長の給与の3割ほど、21万円台でしかありません。つまり、小規模自治体になるほど、議員報酬額は少なくなる傾向にあり、町村では議員報酬のみで生活することが難しく、議員専業者の割合も4分の1を切る状況です。

 議員報酬の低さが議員のなり手不足を招いている可能性があります。議員であることの魅力が失われると、その自治体の重要な決定を担う人材となるべき、能力のある人の立候補を妨げることにもなりかねません。そのため、特に町村部においては、議員報酬の増額が検討され、あるいは実施に移されています。とはいえ、増額幅は限られていて、なり手不足を根本的に解決するには至っていないと考えられます。議員活動を補佐する事務局体制も脆弱で、事務局職員が専任・兼任合わせても平均して2・5人しかいない状態であり、町村議会を中心に、待遇改善が望まれます。


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