全国の地方自治体の長や議員を選ぶ統一地方選挙が始まろうとしている。しかし有権者にとっては、投票行動のための基準が定めにくいため、戸惑いも見られる。本来なら、統一地方選挙は住民にとって最も身近な選挙のはずだが、地方自治体の合併が進んだためもあって、大都市では特に、身近に感じられなくなっている傾向が強い。
大きくなりすぎた基礎自治体
都市では、基礎自治体(市区町村)と住民の距離が遠くなっている。遠くなったのは、必ずしも市区町村や議会だけの責任ではない。
明治維新のあと、山県有朋が市制町村制をつくったとき、市町村は全国に1万5000余あった。今は約1700に減っている。この間、日本の人口は約4倍に増えているのに、である。日本は基礎自治体の数を人為的に減らしてきたのだ。
基礎自治体側は、合併しても、都道府県の事務権限を一部与えた「地域振興局」のような支庁をつくったり、山林やため池、公民館などを管理できる財産区をつくったりして、地域に拠点を残す工夫をしてきたが、それにも限界がある。全国に20ある政令指定都市(横浜、大阪、札幌など)の中にある区には政治的な自治権はなく、行政区としての役割しかない。
地方分権や地域主権の名によって自治体の仕事は増えているが、それに伴って職員の数が増えているわけではない。むしろ、行政改革によって現場の職員の数は減らされる。
国民が行政改革に期待するのは、天下り団体や非効率な仕事の整理だが、このような整理はなかなか進まない一方で、小さな政府論による住民サービスの縮小が進んでいく。結果として基礎自治体の規模は基礎自治体と言えないほど巨大化、たとえば東京都世田谷区は人口100万人に届こうとしており、一方で自治体職員の数は少なくなっている。必然的に住民と基礎自治体の距離が遠くなっている。
働き方の変化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速もあって日本の社会もより社会参加がしやすくなっていて、小規模な地域や職域の単位でのリーダーが生み出されやすくなっている。
自治体制度にも発想の転換が求められている。国に限らず都道府県も市町村も権限を握り続けようとせず時代に適合した改革を指向すべきだ。