2024年4月25日(木)

都市vs地方 

2023年3月22日

世界では高いコミュニティごとの自治

 大きな基礎自治体では、地域ごとにオフィス、商店、住宅街など核となる場所が違う。だからこれらコミュニティ単位の自治を強化するべきだ。

 コミュニティ活動すなわち住民の把握、高齢者福祉サービス、環境維持、まちづくり、治安、防災などの地域活動については、町会・自治会・商店街さらにはマンションの管理組合などの自治権を強めるべきだ。費用については、市区町村が徴税して交付すればいい。基礎自治体分の税を地域に回す。ただしその場合、役員は談合で決めるのではなくきちんと選挙で決めるルールが必要だ。

 もともと日本のコミュニティ活動は町会・自治会・商店街さらにはマンションの管理組合など諸外国に比べて遜色がない。この長所を生かして、新たな地域自治を形成すべき時期が来ている。基礎自治体と住民の距離を近づける政策が求められている。

 世界的には大都市でも、あるいは大都市ほど、地域を重視する傾向にある。たとえば、米国のニューヨーク市は、マンハッタン、ブロンクス、クィーンズ、ブルックリン、スタッテンアイランドの5区に分かれ、それぞれに住民から選ばれたプレジデント(区長)がいて政治的発言力がある。各区はコミュニティに分けられ、市全体では59のコミュニティがある。

 各コミュニティにはボード(協議会)がおかれ、チェアパーソン(会長)がいて事務局もある。連邦、ニューヨーク州、ニューヨーク市と合わせて五層制の自治制度を採用している。

 ドイツは連邦―州―郡―市と四層制である。日本のような、政府―都道府県―市区町村という三層制の制度をとる国はむしろ珍しい。

 英国では一般に、パリッシュ(元は教区)という全国で1万を超える地域自治組織が議会をもち一定の自治権をもっていることで知られるが、大ロンドン市においても、市を構成する35の区と一つのシティでそれぞれに独自の自治制度をもっている。

 現代社会では成熟化が進行して、人々は会社にすべてを埋めて生きているわけではない。本業の傍ら、さまざまな社会活動や地域活動に関わる生き方が増えていく。人々の意識や生活スタイルが大きく変わっていくのだから地域運営の仕組みもそれに合わせて変えたほうがいい。

地域ごとに異なるさまざまな需要

 今の日本の大都市でエリアマネジメントというと、三菱地所や森ビル、三井不動産、安田不動産、NTT都市開発など大手デベロッパーが中心となってイベント・清掃・治安維持などを実施して地域の魅力向上をはかっていくイメージが強いが、そういう活動こそ本来の基礎自治体の機能ではないか。一般のまちでもエリアマネジメントは有効であり、地域自治組織の仕組みを整備したほうがいい。各コミュニティ活動のメニューは地域特性と住民の意思に委ねればよい。

 エリアマネジメントの代表格として、ニューヨーク市のタイムズウクウェアBID(Business Improvement District)がよく紹介される。ニューヨーク市が徴収する税とイベント等による収入により、年間約13億円の予算規模をもつ。これらを財源として警備、清掃、イベントといった基礎自治体の事務を行う。日本でいえば商店街進行組合と町会連合会と、さらに区市町村の地域出張所を合わせたような組織である。

 役員は地権者たちによる選挙で決まる。理事長は、地域振興に実績のある有能なビジネスマンをスカウトしてくる。

 最近話題になることの多い次世代移動サービス「MaaS(マース、Mobility as a Service)」はバス、トラム(路面電車やLRT)や電車、タクシー、飛行機などを利用する移動について、ルート検索から支払いまでを総合化するシステムだが、これも地域交通が基本となって成立する。コミュニティバス、デマンド乗り合いタクシーなど、巨大化した現代の基礎自治体単位ではなく地域単位での議論が望ましい。


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