2024年12月4日(水)

World Energy Watch

2023年4月26日

 ドイツのエネルギー政策では天然ガスも重要な役割を果たしている。1970年に、当時の西ドイツSPD出身のブラント首相は、旧ソ連からのパイプライン経由での天然ガス輸入に合意した。73年からソ連は天然ガスの西ドイツへの供給を開始した。

 SPD出身のシュレーダー首相時代の05年に、競争力のあるロシア産天然ガスのドイツへの輸送を確実にするため、ドイツ企業とロシア・ガスプロムが海底パイプライン・ノルドストリームの建設に合意する。

 ドイツSPDと緑の党が中心になり脱原発を進めることが可能だった背景には、SPDが強化したロシアからの天然ガス供給があった。価格競争力のあるロシア産天然ガスは、減少する原子力の穴を埋めることができた。

 一次エネルギーに占める天然ガスの比率は、2000年の21%から20年には27%まで上昇した(図-2)。その結果、原発の閉鎖が進むにつれ、ロシア産天然ガスへの依存度も急速に高まることになった(図-3)。

 ドイツの脱原発を支えたのは、ロシア産天然ガスだけではない。フランスの電力も脱原発を支えた。

ドイツの脱原発を支えたフランスの電力

 ドイツ政府は、脱炭素実現のため化石燃料を再エネに切り替えるエネルギー転換(Energiewende)を進めている。脱炭素と矛盾するが脱原発もエネルギー転換の対象とされている。

 21年の一次エネルギーにおける再エネ(水力、太陽光、風力、バイオマス)の比率は17%だが、電源においては脱原発と同時に再エネ導入が進み、11年の発電量におけるシェア22%は、22年には50%まで上昇した(図-4)。

 電力は需要量と供給量を常に一致させる必要がある。日照、風況の状況により変動する再エネによる発電量を需要量に合わせるためもあり、ドイツは周辺国との電力の輸出入を行っている。

 再エネからの発電量に対し需要が不足する際には電気の輸出を行い、発電量が不足する際には電気の輸入を行う。それでも十分な需要がない場合には、供給量が需要量を上回ると停電するので再エネ設備からの発電量を抑制する出力制御が行われる。


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