2024年4月13日(土)

新しい〝付加価値〟最前線

2023年5月13日

実際の増産で何が起きたか?

ワクチン輸送コンテナ製造の様子

 まずは、工場、生産場所の確保だ。新規建屋は、短納期すぎて受けてくれるところがなかったのは前述の通り。そのため社内にある倉庫内の活用を考えた。倉庫内にある在庫製品を外部委託倉庫へ移動し、スペースを確保。そこに内部工場として増産のための設備を設置した。

 既存の製造ラインを全てワクチン運搬庫の製造ラインに変更し、確保した。ただし誰もが組めるわけではない。技術五輪並みの能力が求められるからだ。配置には、大いに気を配った。

 昔から付き合いのあった取引先には、専務が全て回り、協力を直接お願いした。状況を理解してくれ、ワクチン運搬庫製造のために、人員協力をしてくれる会社もあったそうだ。燕三条地域は、ものづくりの町。この地域の職人は昔から頼まれたら一肌脱ぐ、誰かのために労力を惜しまない風土が根付いているのだ。

 フィクションのような話だが、うまく行くときは、いろいろなことがプラスに作用する。納期通り完納し、日本でのワクチン接種に貢献した。

FPSC事業の今後

 5月から始まる高齢者や基礎疾患のある人向けの新型コロナウイルスワクチン配送に対応して、ワクチン運搬庫のメンテナンス(リフレッシュサービス)5000台の追加受注があったそうだ。

 しかし、ツインバードは、それだけに留まらず、「医療分野のスタンダードな冷凍技術のポジションを確保」するという目標を持つ。ただし、簡単ではない。人命を常に1社に預けるわけにはいかないからだ。今回は成功したが、失敗していたら、国民へのワクチン接種は遅れていたわけで、国中不安感が蔓延していただろう。ただ今回、大きな足跡を残したことは事実だが、医療分野でのスタンダードは、それだけハードルが高い。

 医療分野は今の調子で行くとしても、他の分野への進出も考えなければならない。グローバル・ニッチであるから成り立つところがあるので、常に市場規模と自社規模に注意する必要もある。

 また、もう一つ重要なことは、技術継承だ。特に人的ノウハウが必要なものは、ある種、徒弟制のような訓練が必要となる。日立ジョンソンコントロール社で技能五輪へ挑戦する若者を取材したことが、寝ても覚めても、技術習得だ。

 しかし、グローバル・ニッチな技術は大きな武器にもなる。今回はコロナ禍で、ワンステップ高台に立ったわけだが、それも粘り強く事業を続けてきたからに他ならない。グローバル・ニッチな技術は強力な武器だが、それを花開かせるためには、いろいろな要素が必要になる。

 今回は「増産」という、今まで使わなかった要素を使うことにより、他が見えるようになった。次にすべきは、他分野ニーズの掘り起こしだ。

   
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