2024年4月20日(土)

新しい〝付加価値〟最前線

2023年5月13日

厚労省からのオーダー

 2020年夏、全国でのワクチン接種のために厚生労働省や製薬会社から求められた台数は、翌年春までに1万台。それまでの生産能力は月300〜400台だったから、通常生産量の約10倍増産しなければ間に合わない。しかも生産は職人の手組み。人数さえいれば、なんとかなるという話ではない。

 私は医療関係の知人が多いが、この話をすると多くの人は、「私なら断るね」即答された。「納期遅れによる、人の命の責任は取れない」ということだ。 医療ビジネスは、普通より、より確実を求められる世界なのだ。

 しかし、厚労省の担当者も引き下がらない「1億2000万人の国民の命を守る」という大命題があるからだ。

 コロナ禍で春先に発生したマスク不足。国内量産ラインを真っ先に立ち上げたのはシャープだった。1カ月の短期立ち上げた。それを可能にしたのは、シャープが使っていない液晶テレビのクリーンルームを持っていたからだ。

 夏にオーダーを受け春先納入だと、増員、建屋の問題が出てくる。ツインバードの場合、規模的に大きくはない。当然、運転資金の問題も出てくる。ちなみに新規の建屋建設は、あまりの短納期であるため、全業者が断ってきたそうだ。

 それでも家電の生産を一時的に委託し、生産パワーをFPSCに振り向けるなどのやり方を考え、目処をつけた。しかし、目処を付けても、それを実際に行うのは大きく異なる。非常時であり、納期遅れをすると、人命が損なわれるかもしれないプロジェクトだ。当然、決断一つにも大変なプレッシャーがかかる。

 その時の社内は「長年投資してきたスターリング冷凍機技術が国難を救い、人々の命を守ることに貢献できるのであればチャレンジしようじゃないか」という雰囲気だったそうだ。自分で自分を鼓舞し、増産にチャレンジすることになった。


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