2024年11月24日(日)

復活のキーワード

2013年8月12日

 さて、今後はインフレになっていくとすれば、資産運用、とくに年金運用のスタイルは変わる必要が出て来る。これまでは「増やす」ことよりも「減らさない」ことで十分だったものが、今後はインフレ率以上に増やすことを求められる。特に今の年金制度では、インフレになれば、それに連動して年金受給額も増えるので、きちんと運用で資産を増やせなければ、おカネが不足してしまう。そのツケは年金掛金を支払う若者や税金を払う国民に回る。

 実は、アベノミクスの3本目の矢である成長戦略「日本再興戦略」に、こんな一文が盛り込まれた。

 「公的・準公的資金について、各資金の規模・性格を踏まえ、運用(分散投資の促進等)、リスク管理体制等のガバナンス、株式への長期投資におけるリターン向上のための方策等に係る横断的な課題について、有識者会議において検討を進め、提言を得る」

 明記はされていないが、ここで想定されているのはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の見直しである。GPIFは3月末で120兆4653億円の資産を運用する、規模では世界最大の投資ファンドだ。ところが全体の60%を日本国債など国内債券に回しており、国内株式にはわずか13%しか投資されていない。日本が成長するという前提に立った資産構成になっていない、とも言える。アベノミクスは成長戦略で、この年金資産を有効活用し、経済の成長につなげれば、年金受給者に大きくプラスになる、という発想を取り入れようとしたのである。

長期間の運用にも
ベンチャーは最適

 日本経済再生本部の議論では、GPIFの資産の一部をベンチャー企業に投資すべきだという意見が出た。日本を「起業大国」にするきっかけをGPIFが担うべきだ、というわけだ。「米国カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)などは、資産構成の1つにベンチャー投資を加えており、長期的な運用利回りの向上に役立っている」と元UBSグローバル・アセットマネジメントの社長で、投資人材の教育ベンチャーを立ち上げた岡村進氏も言う。長期間運用するという年金資金の性格からみても、ベンチャー投資は格好の投資先だというのだ。

 現在、日本のベンチャー・キャピタル(VC)の市場規模はおよそ1兆円と言われる。仮にGPIFの資産の1%が振り向けられるだけで、規模が2倍になる。米国ではインフラファンドやVC、再生ファンドなどへの投資資金の流入額の半分は年金基金の資金だという。巨額の資産を抱えて国債に投資しているのでは、宝の持ち腐れだ。


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